暗黙の強化とは|戦略的に相手を褒めるコツ

暗黙の強化(Implicit Reinforcement)とは、比較対象を褒める(けなす)ことで、相手がけなされている(褒められている)ように感じる傾向のことです。

たとえば、オータニが下記のような発言をしたら、あなたはどう思うでしょうか?

あなたのお兄さんは勉強ができてすごいね!

どうですか?直接言われてはいないですが、「あなたは勉強ができないね!」とけなされているように感じませんでした?

このように、我々は比較対象を評価されることで、間接的に「褒められている、けなされている」ように感じる傾向があります。

しかし、なぜこのような現象が発動するのでしょうか?

そして、どうすればこれを人間関係やマーケティングに活用することができるのでしょうか?

というわけで本日は、

本日のテーマ
  1. 暗黙の強化とは
  2. なぜ暗黙の強化が発動するのか
  3. 暗黙の強化の発動条件
  4. 暗黙の強化を人間関係に活用する方法
  5. 暗黙の強化をマーケティングに活用する方法

というテーマでブログを執筆していこうと思います。

暗黙の強化とは

暗黙の強化の画像
暗黙の強化

比較対象を褒める(けなす)ことで、相手がけなされている(褒められている)ように感じる傾向のこと

暗黙の強化は、1963年にリー・セレクトが発表した論文が元となっているようです。

暗黙の強化の方程式

方程式
  • 比較対象を褒める相手をけなす
  • 比較対象をけなす相手を褒める

これしっかり頭に入れた状態でこれ以降の内容を読んでいただくと分かりやすいですよ?

暗黙の強化の具体例

では、いくつか具体例を紹介しますね。

例1:勉強

もしも、目の前の生徒の学習意欲を上げたいのであれば、こう言いましょう。

他の人たちは、本当に勉強しないよねぇ〜

すると、生徒は自分が勉強している姿を褒められているように感じ、さらに学習意欲が高まります。

例2:恋愛

もしも、好きな異性を直接褒めるのが苦手なのであれば、こう言いましょう。

ほとんどの女性は人の話が聞けないからねぇ〜

すると、女性は自分の聞き上手なところを褒められているように感じます。

例3:仕事関係

もしも、上司を賢く褒めるのであれば、こう言いましょう。

ほとんどの上司は、部下に寄り添ってくれないですからねぇ〜

すると、媚びている感じを出すことなく、上司を気持ちよくすることができます。

なぜ暗黙の強化が発動するのか

しかし、なぜ我々は比較対象の評価によって、褒められている、けなされていると感じてしまうのでしょうか?

2つの理由
  1. 比較をしてしまう生き物だから
  2. 賞罰教育

理由1:比較をしてしまう生き物だから

我々は、本能的に他者と比較をするようにできています。

なぜなら、比較をすることは、身体的・精神的な成長することにつながるからです。

疑問:赤ちゃんが歩けるようになる本当の理由

なぜ、赤ちゃんは歩けるようになると思いますか?

結論、「周りの大人は歩けているのに(比較)、自分だけ歩けていない…」という劣等感を感じるからです。

つまり、周りと比較することで、劣等感を感じ、それを糧にして「歩けるようになるぞ!」というモチベーションにしているのです。

このように、我々は他者と比較をするという本能を持っているから、成長することができているのです。

理由2:賞罰教育

賞罰教育とは、「良いことをしたら褒める、悪いことをしたら罰する」という教育のことです。

我々の多くは、このような賞罰教育による教育を受けてきたことで、“褒められること”と“罰せられること”にものすごく敏感になっていきます。

だから、たとえば、「〇〇君(比較対象)は仕事をよく頑張っているよねぇ〜」なんて言われると、それに「つまり、それは自分は頑張っていないということ?…」と敏感に反応してしまうのです。

このように、賞罰教育により染み付いた文化が、暗黙の強化をもたらしていると言えるでしょう。

暗黙の強化の発動条件

では、どのような時に暗黙の強化は発動してしまうのでしょうか?

発動条件
  1. 相手と関連がある
  2. 今まさにその状況である
  3. みじかな人である
  4. プライドがある

発動条件1:相手と関連がある

暗黙の強化は、比較対象と相手に関連があると発動しやすくなります。

たとえば、下記のように比較対象を褒めたとする。

〇〇くん(比較対象)って、マラソンを走りきれるなんてすごいよねぇ〜

もしも、相手がマラソンをやっている場合は、「けなされている!」と感じるでしょう。

しかし、相手にマラソン経験がなく、無関係だった場合は、なんとも思いません。

なぜなら、相手からすれば、単純に比較対象を褒めているようにしか聞こえないからです。

発動条件2:今まさにその状況である

暗黙の強化は、今まさにその状況である場合に発動しやすくなります。

たとえば、下記のように比較対象を褒めたとする。

〇〇くん(比較対象)って、マラソンを走りきれるなんてすごいよねぇ〜

もしも、相手がマラソンで走り切れなかったという結果の直後だった場合、「けなされている!」と感じやすくなります。

発動条件3:みじかな人である

暗黙の強化は、比較対象がみじかな人であるほど発動しやすくなります。

たとえば、下記のように比較対象を褒めたとする。

お兄ちゃんは(比較対象)、マラソンを走りきれるなんてすごいよねぇ〜

もしも、相手がみじかな弟だった場合、「けなされている!」と感じやすくなります。

発動条件4:相手にプライドがある

暗黙の強化は、相手にプライドがあると発動しやすくなります。

たとえば、下記のように比較対象を褒めたとする。

〇〇くん(比較対象)って、マラソンを走りきれるなんてすごいよねぇ〜

もしも、相手がマラソンに対してプライドを持っていた場合、「けなされている!」と感じるでしょう。

しかし、相手がマラソンをやっているものの、なんのプライドもない場合は、なんとも思いません。

暗黙の強化の注意点

では、ここからは暗黙の強化の注意点を解説します。

注意点
  1. 特定の個人をけなさない
  2. 使い過ぎない

注意点1:特定の個人をけなさない

「特定の個人」ではなく、「一般化された概念」をけなすようにしましょう。

なぜなら、特定の個人をけなすと、相手があなたにネガティブな印象を持ってしまう可能性があるからです。

例:恋愛

たとえば、下記のように特定の個人をけなした人に対してどのような印象を持つでしょうか?

〇〇ちゃん(比較対象)は、人の話を全く聞かないからねぇ〜

もちろん、これでも「嬉しい!」と感じるかもしれませんが、

それと同時に「田中さんって人の悪口言うんだぁ…」と思われてしまいます。

なので、下記のようにけなすようにしましょう。

ほとんどの女性は人の話が聞けないからねぇ〜

このように言われると、自分が褒められていると感じますし、かつ、ネガティブなイメージもほとんど消えますよね?

注意点2:使い過ぎない

暗黙の強化による褒めは、あまり使い過ぎないようにしましょう。

なぜなら、「一般化された概念」をけなしたとしても、結局は他者の悪口を言っていることには変わりがないからです。

例:恋愛

たとえば、注意1を気をつけて褒めたとしても、下記のように回数を重ねると悪いイメージへと変化してしまいます。

ほとんどの女性は人の話が聞けないからねぇ〜
ほとんどの女性は品がないからねぇ〜
ほとんどの女性は自分を持っていないからねぇ〜

どうですか?このように悪口をたくさん言う人ってなんか嫌ですよね?

なので、1回の接触で1回のペースで使うくらいにしておくようにしましょう。

暗黙の強化を人間関係に活用する方法

見ていただいても分かる通り、暗黙の強化によって人間関係が壊れることもあります。

そこで、ここでは暗黙の強化を人間関係に活用する方法について解説していきます。

2つの方法
  1. 前置きをしてから褒める
  2. 勘違いしない

方法1:前置きをしてから褒める

必ず前置きをしてから、比較対象を褒めるようにしましょう。

例:仕事

たとえば、比較対象を褒める時、下記のように伝えるようにしましょう。

別に、〇〇さん(相手)と比較しているわけではないけど、
山田くん(比較対象)はものすごく働くよねぇ〜

このように、「別に比較しているわけではないですよ〜」と言う旨を伝えてから、比較対象を褒めるようにしましょう。

前置きの有る無しで、相手に与える印象は大きく違ってきます。

方法2:勘違いしない

中には、相手が比較対象を褒めるなんてこともあります。

その時に、「うわ、けなされている…」と感じる人が多いですが、そんな時は「自分には関係ない!」と考えるようにしましょう。

別に、相手が比較対象を褒めているからといって、それがイコールあなたをけなしていることにはなりません。

もちろん、中には戦略的に比較対象を褒めて、間接的に傷つけてくる輩もいますが、そういう人間とは付き合わなければいいだけです。

このように、自分をメタ認知することができれば、無駄に傷つくことことが大幅に減少するでしょう。

暗黙の強化をマーケティングに活用する方法

では、ここからは暗黙の強化をマーケティングに活用する方法について解説していきます。

マーケティングに活用する方法
  1. 不特定多数と比較する
  2. ライバルを想起させる

方法1:不特定多数を比較する

たとえば、AmazonなどのECサイトには、商品ページに「※類似商品にお気をつけください」という注意書きが入っていたりします。

これによって、消費者に「これが本家なんだ!」と思わせることができ、かつ、他社の商品を間接的にけなすことができます。

というのも、「※類似品にお気をつけください」というコピーを見ると、「ここ以外の他社は、分家なんだ!」勘違いするからです。

方法2:ライバルを想起させる

引用:https://www.kawai-juku.ac.jp/spring/

たとえば、河合塾などの塾のサイトでは、ライバルを想起(思い起こさせる)ヘッダー画像が入っていたりします。(またはコピーも入っているところも)

これによって、サイト訪問者が「私も負けてられない!」と感じるようになり、オンライン上で申し込みなんてことにも繋がります。

まとめ:暗黙の強化

では、最後にまとめましょう。

本日は、

本日のテーマ
  1. 暗黙の強化とは
  2. なぜ暗黙の強化が発動するのか
  3. 暗黙の強化の発動条件
  4. 暗黙の強化を人間関係に活用する方法
  5. 暗黙の強化をマーケティングに活用する方法

というテーマでブログを執筆しました。

褒めたり、けなしたりする際は、様々なことに気を遣わなければならないということを理解してもらえたでしょうか?

もしも、理解してもらえたのであれば、今後は戦略的に「褒める・けなす」を使っていくようにしましょう。

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