希少性の原理とは、ある対象が限定されると、その対象を不当に価値付けしてしまうという心理現象のことです。
たとえば、バーゲンセールなどで「限定100個!」「12月31日までの〜」「地域限定の〜」などと言われると、必要がなかったとしても「欲しい!」と感じてしまいませんか?
このように、われわれは「数量」「期限」「地域」などが限定されていると、その対象に価値があると見積もってしまうのです。
しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
というわけで本日は、
- 希少性の原理とは
- 希少性の原理を営業に活用する方法
- 希少性の原理をマーケティングに活用する方法
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
希少性の原理とは

限定された対象を不当に価値付けしてしまうという心理現象
希少性の原理の具体例
ではいくつか具体例をみていきましょう。
例1:バーゲンセールス
「限定100個!」「12月31日までの〜」などと言われると、その価値を高く見積もるようになり、「手に入れたい!」という欲求が生まれます。
例2:非売品
非売品とは、一般では販売されていない商品のことです。
たとえば、非売品の人形がオークションなどに出品されていたとする。
とくに可愛くもない人形です
すると、多くの場合、どんどん値段がつりあがっていきます。
なぜなら、非売品という希少性があるからです。
つまり、その商品に機能性などに関わらず、われわれは希少性の影響を受け、高いお金を支払ってしまうことがあるのです。
例3:ギザ10
ギザ10とは、円の周りがギザギザした10円玉のことです。
ギザ10は1951~1958年に製造された10円玉で、もう製造されていません。
それがゆえに、希少性の原理が働き、現在は高値で取引されているようです。
ただの10円玉であるにも関わらず、それを高値で取引しているのって面白いですよね?
希少性の原理から起こった事件

では、ここで1つ希少性の原理がもたらした事件を紹介します。
事件:オールドコークとニューコーク
1985年にコカ・コーラ社はある事件を起こしました。
それは「甘みの強いペプシを好む人が増えているというデータ」を踏まえて、
従来の製法のコークを撤退させて、もっと甘い「ニュー・コーク」に切り替えるというもの。
「何が事件なの?」と思った人もいると思いますが、実はこれに従来の「オールド・コーク」を愛飲する人たちは激怒したのです。
中でも、引退した投資家ゲイ・マリンズ氏は大激怒して「全米オールド・コーラ愛飲家協会」という組織を立ち上げ、これに猛抗議しました。
味はどうでもよかった…
しかし、ここで驚くべきことは、
なんと!ゲイ・マリンズ氏はブラインドテストでオリジナルコークとニューコークの違いがわからなかったのです。
ブラインドテスト=目隠しでコーラの味を当たるといったテストのこと
つまり、彼は従来の「オールド・コーク」を飲む機会を失ってしまうという欲求だけで、このような大胆な行動を起こしたのです。
ちなみに、この事件が起こる前の1981〜1984年の市場調査では、25の都市で20万人を対象に新旧のコークを念入りに試飲テストしていたのですが、
そのブラインドテストでは55%vs45%でニューコークの方がオールドコークよりも好まれていました。
さらに、事前にどちらがオールドコークでニューコークかを知らされていた時では、ニューコークの方を好む人がさらに6%も多いことがわかりました。
なぜなら、市場調査の段階では「ニューコーク」の方が手に入りにくくて、「オールドコーク」の方が手に入りやすかったために前者に希少性が反映されたからです。
希少性の原理はなぜ発動するのか

しかし、なぜ希少性の原理が発動してしまうのでしょうか?
- 本能
- エネルギーの節約
理由1.本能
結論、これは人間の本能なんですよね。
失う=死
われわれがサバンナで生活をしていた時代、何かを失うということは「死」に直結する概念でした。
なぜなら、所有している食べ物を失ってしまうと、次いつ手に入るか分からなかったからです。
昔はコンビニなんてありませんからね
だから、手に入った食べ物をなんとしても所有しようとしていました。
このように、われわれはサバンナ時代に培った本能によって、何かを失うという「損失」に敏感に反応するようにできています。
だから、ある対象に希少性がある場合、それを失うたくないという欲求から、その価値を高く見積もってしまうのです。
理由2.脳のエネルギーの節約
希少性の原理は、われわれの脳のエネルギーを節約するのに一役買っています。
われわれの脳のエネルギーは、1日の中で使用できる容量が決められている
なぜなら、「限定されたもの=価値が高い」と一瞬で判断することができれば、その対象の質について吟味する必要がなくなるからです。
たとえば、「限定10個しかない人形」と言われた時に、「本当に10個しかないのか?」と疑い、ネットで調べまくるなんてことはしないですよね?
このように、「限定されたもの=価値が高い」という方程式を脳の中に持っていれば、脳のエネルギーを無駄に消耗する必要がなくなるのです。
希少性の原理のデメリット
結論、質をおざなりにしてしまうことがあります。
直感というスピードを優先してしまうあまりに、質を捨ててしまうことも少なくありません。
たとえば、「限定10個ですよ〜」と言われて購入したものの、本当はそれは偽物だったなんてことにもつながりますからね。
希少性の原理の実験

ではここで、希少性の原理で有名な実験を紹介します。
実験:ステファン・ウォーチェル
社会心理学者のステファン・ウォーチェルの実験を紹介します。
手順1
まず、被験者に2つの瓶に入ったチョコレートを評価してもらいます。
その際、チョコレートの入れ物を2つにわけます。
- 瓶の中に10枚入ったチョコクッキー
- 瓶の中に2枚入ったチョコクッキー
手順2
そして、それぞれのクッキーを食べた被験者に、クッキーの味を評価してもらい価格を設定してもらいました。
実験の結果
多くの被験者が②のクッキーの方が、①のクッキーよりも美味しいと評価し、クッキーの値段も高く設定したのです。
つまり、同じ味のクッキーであるにも関わらず、手に入りにくいものに対してはそれだけ高く評価したということですね。
続きの実験
ウォーチェルは、さらに実験をおこないます。
今度は、被験者に先ほどとは違った2つのパターンのクッキーの瓶を渡し、それを食べてもらいます。
- 瓶の中に10枚入ったチョコクッキーから、2枚しか入っていないチョコクッキーに取り替えたパターン
- 瓶の中にもともと2枚しかチョコクッキーが入っていないパターン
この条件の場合、どちらのクッキーの方が美味しいと評価されたのか?を調べました。
実験の結果
結果は、①のクッキーの方が②よりも高く評価されたのです。
つまり、最初から量に制限をかけられる方よりも、あとから制限をかけられる方に大きな影響を受けるということですね。
動画にしました
希少性の原理と関連した心理学

- 心理的リアクタンス
- 損失回避
- 保有効果
心理学1.心理的リアクタンス
自由を制限されるほど、その自由を取り戻そうとする心理現象
例:勉強を強要される
たとえば、親に「勉強しなさい!」と言われて、モチベーションが下がってしまったことってありませんか?
このように、われわれは自由を制限されることで、それを取り戻そうとして、逆の行動をしてしまうことが多々あります。
心理学2.損失回避の法則
人は損をすることに強い嫌悪感を感じるという法則
例:ギャンブル
たとえば、あなたは下記のギャンブルを魅力的に感じるでしょうか?
- 表が出たら1000円もらえる
- 裏が出たら1000円失う
きっとそうは思わないですよね?
というのも、人は何かを得るという利得よりも、何かを失うという損失に影響を受けやすいからです。
これを、プロスペクト理論といいます。
心理学3.保有効果
所有しているモノに対して、不当に価値付けしてしまう心理現象
例:断捨離できない理由
たとえば、「買ったもの」や「貰い物」をいつまでも捨てることができないのは、所有することでこれらの価値を高く見積もってしまっているからです。
他にも、投資の損切りができなかったり、恋愛をズルズル引きずっとしまうのも、保有効果が深く関連しています。
希少性の原理を営業に活用する方法


- 現状を肯定する
- 説得し過ぎない
- 即決価格の提示
方法1.現状を肯定する
結論、相手の現状を肯定しましょう。
すると、言いにくい悩みを自然と引っ張り出すことができます。
例:保険の営業
たとえば、あなたが保険の営業をしているとします。
その時、顧客にダイレクトに「何か保険での悩みってありませんか?」と尋ねと、どうしても売り込み感が出てしまいます。
何か悩みはありますか?
え、、、
将来のことなどものすごく考えられていそうですね!(現状肯定)
いえいえ、そんなことないですよ〜
そうなんですか!もし、小さいことでも何か悩みがありましたら聞かせていただけますか?
方法2.説得し過ぎない
「説得すればするほど、顧客が離れて行ってしまった…」なんていう経験はありませんか?
たとえば、「この商品は〜な特徴があるんです!」「絶対に購入された方が良いですよ!」など。
これは、ブーメラン効果といって、心理的リアクタンスの一種です。
なので、「押してダメなら引いてみろ」というコトワザがある通り、
ゴリゴリ押す営業をするのではなく、顧客のニーズをしっかりヒアリングし、落ちついて提案をするようにしましょう。
方法3.即決価格の提示
即決価格の提示とは、この場で購入決断することで、割引をするという販売戦略のことです。
たとえば、「本日ご購入いただけたら、1万円引きとさせていただきます!」みたいな感じです。
これにより、顧客の即決率を高めることができます。
「検討します」はNG
「検討します」で家に持ち替えられてしまうと、契約率がグッと落ちてしまいます。
なぜなら、顧客の購入モチベーションが低下してしまうからです。
なので、「鉄は熱いうちに打て」というように、即決価格を用いて、プレゼンテーション直後に購入決断をさせるようにしましょう。
希少性の原理をマーケティングに活用する方法


- 限定性
- 期限付のポイント
方法1.限定性
下記の項目に限定性をもうけるようにしましょう。
- 「数量」
- 「日数」
- 「地域」
- 「会員」
すると、商品・サービスへの誘導率が高まります。
例:メルマガ
今だけ限定で29,800円のメルマガを無料で提供します!
このように、限定性を添えられると、「じゃあ、一応登録しておくか!」となりますよね?
なので、あなたの販売戦略の中に、限定性が使われていないのであれば、ぜひ活用するようにしましょう。
方法2.期限付のポイント
期限付きのポイントを採用することで、消費を煽ることができます。
なぜなら、「ポイントが失効してしまう…」という損失が生まれるからです。
たとえば、ヨドバシカメラのアプリなどで、「あと3日で1000円分のポイントが消滅してしまいます」みたいな連絡が来たりしますよね?
つまり、「ポイントを使うために購入する!」というアクションを興すことが出来るようになるのです。
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まとめ:希少性の原理
では最後にまとめましょう。
本日は、
- 希少性の原理とは
- 希少性の原理を営業に活用する方法
- 希少性の原理をマーケティングに活用する方法
というテーマでブログを執筆しました。
希少性の原理は誰でも簡単に使えるコスパの良い心理法則です。
なので、まだ販売戦略に導入していないのであれば、すぐにでも導入しましょう。
もしも、その他の心理法則について詳しく知りたい方は、下記の記事なども参考にしてもらえればと思います。