スリーパー効果とは、時間の経過とともに「情報源」の記憶が薄れていき、「情報そのもの」だけが記憶に残るという心理現象のことです。
たとえば、ワイドショーで報じられた芸能人の噂話を最初は「嘘だ〜」と思っていても、時間が経つと「本当かも…」と思うことがあります。
このように、我々の脳は「情報そのもの」よりも「情報源」の方が早く忘れさられるようにできています。
しかし、上記で事例を1つ紹介したものの、ちょっと難しいですよね。かつ、これを営業やマーケティングに活用する方法などはあるのでしょうか。
というわけで本日は、
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
スリーパー効果とは
時間の経過とともに「情報源」の記憶が薄れていき、「情報そのもの」だけが記憶に残るという心理現象
スリーパー効果は、心理学の分野で研究されている現象で、信頼性が低い情報源から受けた情報が、一定期間経過した後に、その情報が信頼性が高いと評価される傾向があることを指します。この効果は、時間が経つにつれて情報源の信頼性の評価が薄れ、情報そのものに対する態度変容が強まるために起こるとされています。
後ほど具体的な内容を紹介しますが、スリーパー効果の提唱者であるハーバート・ケルマン(Herbert Kelman)は、この現象をさらに深く研究し、情報源の信頼性が情報の評価にどのように影響するかを明らかにしました。ケルマンは、スリーパー効果が主に情報源の信頼性と情報そのものの区別が薄れることによって生じると主張しています。
要約すると、スリーパー効果は、信頼性の低い情報源からの情報が、時間経過により信頼性が高い情報と同様に評価される現象であり、心理学者のハーバート・ケルマンがこの効果の研究で重要な役割を果たしています。
スリーパー効果の具体例
では、スリーパー効果の具体例をいくつかみていきましょう。
- 広告
- ウワサ
- メディア報道
方法1:広告
スリーパー効果は、広告においても顕著に現れます。例えば、最初はあまり信頼できないと思われるセールスマンや企業からの情報が、時間が経つとその信頼性が向上し、その製品やサービスを購入する気になることがあります。情報源の信頼性の印象が時間とともに薄れることで、広告の情報がより信頼できるものとして受け止められるようになります。
方法2:ウワサ
職場や学校などで広まるウワサは、情報源がはっきりしないことが多いため、スリーパー効果が現れやすい状況です。最初は疑わしいと感じたウワサも、時間が経つことでその信憑性が上がり、真実として受け入れられることがあります。
方法3:メディア報道
ニュースやドキュメンタリー番組などの報道は、基本的に信頼性が高い情報源ですが、時には信頼性が低い情報も含まれることがあります。そのような情報に最初は懐疑的であっても、時間が経つとその情報が信憑性を持って受け入れられることがあります。特に、情報が繰り返し報道される場合、スリーパー効果がより顕著に現れることがあります。
スリーパー効果とプロパガンダ映画
1940年代に行われたスリーパー効果の研究は、主に第二次世界大戦中のプロパガンダに関連して行われました。この研究は、戦時中のプロパガンダの効果を評価しようとするもので、特に情報源の信頼性と受信者の意見や態度の変化との関係に焦点を当てていました。
当時の研究は、信頼性の低い情報源(例えば、敵国のプロパガンダ)からの情報が、時間が経過すると、信頼性の高い情報源からの情報と同じくらい効果的になることを示唆していました。これは、受信者が時間が経つにつれて情報源の信頼性についての記憶が薄れ、情報そのものに対する態度変化が強まるためでした。
具体的な研究手法としては、当時の研究者たちは実験参加者に対して、異なる情報源からのプロパガンダメッセージを提示し、その後一定期間が経過した時点で、参加者の意見や態度の変化を調査していました。これにより、信頼性の低い情報源からの情報が、時間の経過によって受信者により強い影響を与えることが確認されました。
このような研究を通じて、スリーパー効果の存在が明らかになり、心理学の分野で重要な研究課題となりました。以降の研究によって、この効果がさまざまな状況や条件下でどのように機能するかが明らかにされ、情報伝達や意思決定に関する理解が深まっていきました。
見ていない兵士よりも戦争に対して高い共感を示していたのです。
スリーパー効果の実験
1951年にアメリカの心理学者であるカール・ホブランド(Carl Hovland)は、被験者の学生に自分たちの意見とは逆の記事を読ませました。ちなみに、記事の内容は、抗ヒスタミン剤(アレルギーを抑える薬)を医者の処方が無くても販売されるべきか、というもの。具体的には下記のような感じになります。
次に、被験者を2つのグループに分けて、別々の「情報源」に関する説明をしました。
そして、それぞれの被験者がどれくらいの割合で自分の意見を変えるのか、ということについて調べました。
当たり前の話ではありますが、「情報源」の信頼性により「情報そのもの」も信頼されやすくなるという結果となりました。
しかし、実験の4週間後に、もう一度被験者の意見を調べたところ、意見を変える割合にほとんど違いがなくなっていたのです。
つまり、最終的には、「信頼できる情報源」を読んで意見を変えた割合は16.1%で、「信頼できない情報源」を読んで意見を変えた割合は20%となりました。9.3%もついていた差が、3.9%まで下がったのには驚きですよね。
スリーパー効果を営業に活用する方法
ここでは、スリーパー効果を営業に活用する方法を3つ紹介します。
- 信頼性の高い情報源を提示する
- 情報を繰り返し伝える
- フォローアップを行う
方法1:信頼性の高い情報源を提示する
最初に、信頼性の高い情報源から得た情報やエビデンスを提供しましょう。例えば、業界の専門家や権威ある機関が推奨する製品・サービス、または評判の良い顧客の声を紹介することができます。これにより、お客様が最初から製品・サービスに対して良い印象を持ち、信頼感が生まれます。
方法2:情報を繰り返し伝える
情報を繰り返し伝えることで、お客様の記憶に定着させることができます。特に、製品やサービスの利点や独自性を強調する情報を何度も提供しましょう。時間が経つにつれ、お客様はその情報を信じるようになり、製品・サービスに対する評価が向上します。
方法3:フォローアップを行う
最初の接触から一定期間経過した後にフォローアップを行いましょう。この時点で、お客様は情報源の信頼性についての記憶が薄れている可能性がありますが、提供された情報に対する印象は残っています。フォローアップを通じて、製品やサービスの利点を再度伝えることで、お客様が購入に踏み切る可能性が高まります。
スリーパー効果をマーケティングに活用する方法
ここでは、スリーパー効果をマーケティングに活用する方法を3つ紹介します。
- 繰り返しのメッセージ伝達
- 時間をかけた情報提供
- フォローアップを行う
方法1:繰り返しのメッセージ伝達
製品やサービスの利点や特徴を強調するメッセージを繰り返し伝えることで、消費者の記憶に定着させます。広告やコンテンツマーケティング、SNSなど、さまざまなチャンネルを通じて同じメッセージを繰り返し伝えることで、スリーパー効果が発揮される可能性が高まります。加えて、繰り返しの情報提供により、ザイアンス効果も一緒に活用することができるので、信頼も一緒に獲得することができます。
方法2:時間をかけた情報提供
情報提供を一度に行うのではなく、段階的に行うことで、消費者が情報に慣れ親しむことができます。これにより、情報が消費者の心に徐々に浸透し、スリーパー効果が働く可能性があります。
方法3:フォローアップを行う
最初の接触から一定期間経過した後にフォローアップを行いましょう。この時点で、消費者は情報源の信頼性についての記憶が薄れている可能性がありますが、提供された情報に対する印象は残っています。
フォローアップを通じて、製品やサービスの利点を再度伝えることで、消費者が購入に踏み切る可能性が高まります。フォローアップは、メールマーケティングやリマーケティング広告、SNSなどを通じて効果的に行うことができます。
まとめ
スリーパー効果とは|信頼度0からでも売上を上げる心理法則
スリーパー効果で大切なことは、「情報そのもの」よりも先に「情報源」が忘却されやすいということです。これさえ覚えておけば、たとえ忘れたとしても、スリーパー効果をすぐに思い出せるでしょう。
かなり地味な心理法則ではありますが、営業でもマーケティング活用可能な心理法則になりますので、あなたの営業戦略の中に入れることをお勧めいたします。
スリーパー効果とは|信頼度0からでも売上を上げる心理法則