【アンダーマイニング効果】「報酬」がやる気を奪う意外な心理学

アンダーマイニング効果とは、内発的動機付けで行われていたことに、物質的・金銭的報酬などの外発的動機付けを与えると、やる気を失ってしまうという心理現象です。

 

たとえば、親から「勉強しなさい!」と強制され、勉強へのやる気が一気に低下してしまったなんて経験ありませんか?

他にも、楽しんでやっていたことに対して、無理やり報酬を与えるようになると、その報酬をもらうためにしか行動を取ろうとしなくなったりもします。

このように、外部による動機付けは、やる気を低下させてしまうことが多々あります。

 

しかし、なぜこのような現象が起きてしまうのでしょうか?

 

というわけで本日は、

本日のテーマ

  1. アンダーマイニング効果とは
  2. アンダーマイニング効果の具体例
  3. アンダーマイニング効果を効果的に利用する方法

というテーマでブログを執筆していこうと思います。

 

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果

内発的動機付けで行われていたことに、物質的・金銭的報酬などの外発的動機付けを与えると、やる気を失ってしまうという心理現象

アンダーマイニング効果は、1971年に心理学者エドワード・L・デジマーク・R・レッパーの実験により発見されました。

(実験内容は後ほど解説)

 

アンダーマイニング効果の具体例

おじいさんは、自宅近くグランドで、サッカーをやっている少年たちを煩わしいと感じます。

「これでは、毎日の読書に集中できない!」と。

そこで、おじいさんは着想にたどり着きます。

 

それは、少年たちに「もしも、ここでサッカーをやってくれれば500円あげるよ」とアプローチするというものです。

その提案に少年たちは喜び、500円欲しさに毎日サッカーをするようになりました。

しかし、そんなある日、おじいさんは少年たちにあることを告げます。

「ごめん、これからはお金をあげることをやめにした…」

すると、少年たちは「え〜!じゃあここで二度とサッカーなんてしてやるものか!」と、それ以降グランドに現れなくなったのです。

 

外発的動機付け・内発的動機付け

では、ここからは「外発的動機付け」と「内発的動機付け」についてそれぞれ詳しく解説していきます。

 

外発的動機付け

外発的動機付けとは、外部から与えられる「受動的」な動機付けです。

  • ボーナスアップのために、仕事を頑張る
  • お母さんに怒られないために、勉強をする
  • 尊敬している人に「本を読め!」と言われたので、本を読む

 

内発的動機付け

内発的動機付けとは、内部から自発的に沸き起こる「能動的」な動機付けです。

  • 楽しいからゲームをやる!
  • 興味関心があるから、心理学について調べる!
  • 心が穏やかになるから、ボランティア活動をする!

 

アンダーマイニング効果の実験

1971年に行われた心理学者エドワード・L・デジマーク・R・レッパーの実験を紹介します。

 

金銭的報酬はやる気を低下させる 

被験者の大学生に、実験当初、流行っていたソマパズルを行わせます。

ソマパズル

立体のパズル(7種類の形をしたパズルを繋ぎ合わせ、飛行機や犬の形を作ることができます)

 

そして、被験者を2つのグループに分けて、それぞれに3つのセッションを行わせました。

セッション1

普通にパズルを解いてもらう

セッション2
  • Aグループ:パズルが解ける度に、1ドルを与えると告げる
  • Bグループ:何も伝えない
セッション3

普通にパズルを解いてもらう

 

どのセッションでも、パズルが2問終了した時点で、実験者は8分間部屋を離れます。

その際、被験者には「実験者がいない間、実験室にあるものに触れてもいい」と告げます。

そして、どれくらいの被験者が、どれくらいの時間ソマパズルに触れるか?ということを調べました。

 

実験の結果

結果、Bグループの被験者がソマパズルに触れる時間に変化はありませんでしたが、Aグループの被験者ソマパズルに触れる時間が少なくなったのです。

このように、最初は内発的動機により行われていたところに、金銭的な外発的動機が与えられると、やる気が低下してしまうということが分かりますね。

つまり、ソマパズルが、金銭を得るための手段になってしまったのです。

 

アンダーマイニング効果はなぜ発動するのか

ではここからは、アンダーマイニング効果がなぜ発動してしまうのか?について解説していきます。

 

結論:自律性が失われる

結論、「自律性」が奪われてしまうからです。

「自律性」とは、人の「選択したい!」という自由への欲求のことです。

コロンビア大学の教授シーナ・アイエンガーは、名著『選択の科学』にて、自律性と幸福感には相関関係があると言っています

つまり、「自分で選択したい!」という欲求が、外発的動機付けにより損なわれてしまい、やる気が失われてしまうのです。

 

解決策:選択権を与えよ

ではどのようにすれば、他者のやる気を高めることができるようになるのでしょうか?

それは、選択権を与えることです。

なぜなrあ、人は「自らの手で選択している!」という感覚を持つだけで、やる気が高まるからです。

 

報酬を選ばせる

たとえば、多くの企業は営業マンに対して予め決まった割合の成果報酬を金銭という形で与えます。

しかし、もしも営業マンの「自律性」を高めたいのであれば、成果報酬を下記のような形で選択させるといいでしょう。

  • 金銭
  • 休暇
  • ギフト券

多くの営業マンは「金銭」を選択するでしょうがこれでいいのです。なぜなら、自ら選択させることに意味があるからです。

 

「選択権」と「やる気」の実験

心理学者のダイアナ・コルドヴァは、子供(小学3年生〜高校生)の選択の感覚に関する実験を行いました。

コルドヴァは、生徒たちにSFをテーマにしたパソコン用の算数学習ゲームを与えました。

このゲームは、算数式を解く順番を学ぶためのものです。

たとえば、「6+4×5=?」のような問題です。(4×5から解きますよね?)

そして、子供たちを2つのグループに分けます。

  1. 学習内容を何も選択できない
  2. 学習内容を選択できる(自分を表すアイコンを4つの中から選択可能、宇宙船に好きな名前を付けることが可能)

 

実験の結果

実験の結果、②の子供たちの方が、ゲームを楽しみ、休み時間にもプレーを続ける傾向があったのです。

さらに、その後の算数のテストでも、成績を向上させることができました。

 

選択対象が学習内容とは、無関係であったにも関わらずですよ?

これは、選択の感覚を与えることで、自律性の欲求が満たされ、内発的動機づけが高まり、大きな成果を上げることが出来たからだと言えますね。

 

アンダーマイニング効果とエンハンシング効果

ではここからは、アンダーマイニング効果と関連のあるエンハンシング効果について解説していきます。

 

エンハンシング効果

エンハンシング効果

言語的な外発的動機付けにより、内発的動機付けが強化される心理現象

たとえば、親から「80点とるなんてすごいね!」と褒められて、さらに勉強を頑張ろうと感じた経験はありませんか?

 

アンダーマイニング効果との違い

結論、下記の違いがあります。

2つの違い

  • エンハンシング効果→内発的動機の強化
  • アンダーマイニング効果→内発的動機の低下

 

エンハンシング効果は、アンダーマイニング効果と一緒で外発的動機付けです。

しかし、言語的報酬を与えてた方が、内発的動機が強化されるというメリットがあります。

 

もしも、相手のやる気を高めるエンハンシング効果について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてもらえればと思います。

エンハンシング効果とは|やはり「叱る」より「褒める」がやる気を高める!?

 

内発的動機付けは成果が出やすい

実は、外発的動機付けよりも、内発的動機付けによる行動の方が、成果を上げる可能性が高くなる傾向があります。

 

減量

たとえば、肥満の人の減量を取り上げた研究では、スタッフの人たちが「自律性」を尊重してくれると感じた被験者の方が、

スタッフに管理されていると感じた被験者と比べて体重を多く減らし、定期的にエクササイズを行い、その後の追跡調査でも、体重を維持していることが分かりました。

 

社会的成功

他にも、自らに選択権があり、人生は自分で切り開くものだと考える人ほど、モチベーションが高く、成功しやすいという研究もあります。

※研究を取り上げたら、キリがないくらいです

つまり、人は外発的動機付けにより、選択の自由が奪われていると感じると、成果を上げることが困難になるということですね。

 

アンダーマイニング効果と報酬の関係

ではここからは、アンダーマイニング効果をさらに深掘りして解説していこうと思います。

 

きっと、報酬が大きいとやる気が高まると思っているのではないでしょうか?

しかし、実は、報酬が大きすぎると、逆にパフォーマンスが低下してしまうということが分かっています。

 

大きな報酬はパフォーマンスを下げる

2009年の研究では、被験者は、創造性・記憶力・運動スキルを測定するタスクに取り組ませました。

 

実験の結果

結果、大きな報酬を与えられると、成績が急激に落ちたのです。なぜなら、大きな報酬のプレッシャーに負けてしまったからです。

たとえば、優勝賞金100万円よりも、優勝賞金1000万円の方がプレッシャーがかかってしまい、思ったようなパフォーマンスを発揮することができないのと似ています。

つまり、報酬が大きいからといって、常にやる気が高まるわけではないということですね。

 

動画にしました

 

報酬の大きさを使い分ける

しかし、大きな報酬が全て悪いのかというとそうではありません。

結論、「大きな報酬」と「小さな報酬」の使いわけが大切です。

 

十分に与えるか、全く与えないか

ウリ・ニーズィーとアルド・ルスティキニの実験を紹介します。

 

被験者の高校生に、寄付を募るため民家を回らせます。

その際、高校生たちの報酬に違いをつけました。

  1. 大きな報酬:集めたお金の10%
  2. 小さな報酬:集めたお金の1%
  3. 報酬なし

 

実験の結果

すると、結果は下記のような順位となりました。

  • ③報酬なし
    →平均239シュケル
  • ①大きな報酬
    →平均219イスラエル・シュケル
  • ②小さな報酬
    →平均154シュケル

 

面白いですよね?

なぜなら、報酬がゼロの学生が一番寄付を募ることができたのですから。

 

行動→態度

なぜ報酬なしの学生が、大きな報酬の学生とほぼ同等のお金を集めることができたのでしょうか?

それは、「コミットメントと一貫性の原理」が働いたからです。

コミットメントと一貫性の原理

行動と一致した態度を取るという心理現象

 

大きな報酬だと「お金のために頑張る!(外発的動機)」という動機になります。

これは分かりますよね?

 

しかし、報酬がゼロだと「私は自分の意思でボランティア活動をしているんだ!(内発的動機)」という動機に変わるのです。

つまり、「ボランティアをする」という行動をとったことで、無意識に「ボランティアが好きだから!」という態度を取るようになるということです。

 

もしも、この行動と態度の仕組みについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてもらえればと思います。

認知的不協和とは|具体例を使って分かりやすく解説

 

アンダーマイニング効果と2つの報酬

ではここからは、アンダーマイニング効果をさらに深掘りして解説していこうと思います。

 

2つの報酬

報酬には大きく分けて2つ存在します。

  1. 金銭的報酬
  2. 社会的報酬

 

①金銭的報酬

お金による報酬(成果報酬など)

 

②社会的報酬

モノや言葉による報酬(プレゼントや褒め言葉など)

社会的報酬は、相手の「内発的動機」を強化します。

つまり、これは「エンハンシング効果」の影響を使うことができるということですね。

では、これら2つの報酬は、どのように使い分けていけばいいのでしょうか?

 

長期的な関係を築きたい→社会的報酬

なぜなら、もしも「金銭的報酬」を与えてしまうと、「社会的関係」から「市場的関係」になってしまうからです。

 

引越しの手伝い

たとえば、あるふたりの友達に引越しの手伝いをしてもらったとする。

あなたはそのお礼に、彼らに別々の報酬を渡します。

  1. ワイン1本(社会的報酬)
  2. 5,000円(金銭的報酬)

 

そして、2週間後のある時、新しい家で水道管が破裂したとする。

さて、どちらの友達が、報酬無しで手伝ってくれる可能性が高いでしょうか?

 

結論、社会的報酬を受け取った友達でしょう。

なぜなら、彼は社会的関係を維持しようとするからです。

なので、仮に報酬がなかったとしても、また手伝ってくれる可能性が高くなります。

 

一方で、金銭的報酬を受け取った友達は、また金銭的報酬を要求するようになる可能性が非常に高くなります。

なので、金銭的報酬を与えないと、手伝ってくれない可能性が高いのです。

 

一度だけ何かをしてもらいたい→金銭的報酬

なぜなら、行動する動機を一瞬で強化できるからです。

「これだけのお金をもらったことだし!」みたいな感じで。

 

引越しの手伝い part.2

先ほどの「引越し」の例を引き合いに出して解説しましょう。

もしも、普段から人間関係が強化されておらず、また、すぐにでも手伝ってもらいたい場合は、金銭的報酬で解決するようにしましょう。

しかし、先ほどもお伝えした通り、金銭的報酬で手伝った人は、それ以降もお金でしか動かなくなる可能性が高くなります。

 

まとめ

  • 長期的な関係を築きたい→社会的報酬
  • 一度だけ何かをしてもらいたい→金銭的報酬

「深い付き合いの深い人」などには「社会的報酬」を渡すようにして、「付き合いの浅い人」などには「金銭的報酬」を渡すようにしましょう。

 

参考図書

 

まとめ:アンダーマイニング効果

では最後にまとめましょう。

本日は、

本日のテーマ

  1. アンダーマイニング効果とは
  2. アンダーマイニング効果の具体例
  3. アンダーマイニング効果を効果的に利用する方法

というテーマでブログを執筆しました。

 

相手のやる気をコントロールすることは、相手をコントロールすることにもつながります。

なので、今後はアンダーマイニング効果を意識した戦略を取るようにしましょう。

 

もしも、「内発的動機付け」による、やる気の高め方についても詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてもらえればと思います。

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