著書:サイコロジーセールスを出版しました

カクテルパーティー効果とは|意味・具体例・活用法を解説

カクテルパーティー効果とは、自分が注意を向けた音声情報だけが処理されるという心理現象のことです。

たとえば、我々は、騒音の中でも友達と会話することができたりしますよね。これは、周りの騒音を遮断して、友達の声だけに注意を向けることができていることによる現象になります。このように、我々は自分にとって必要な音声情報だけがしっかり処理することができるようにできているわけです。

しかし、なぜこのような現象が起きるのでしょうか。本記事では、カクテルパーティー効果の脳科学的メカニズムと、それに関連した初期選択理論や後期選択理論など、そして、それを営業に活用する方法などを紹介していきます。

というわけで本日は、

本日のテーマ

カクテルパーティー効果とは|意味・具体例・活用法を解説

というテーマでブログを執筆していこうと思います。

カクテルパーティー効果とは

カクテルパーティー効果

自分が注意を向けた音声情報だけが処理されるという心理現象

カクテルパーティー効果(Cocktail Party Effect)は、人間の聴覚システムが複数の音声信号が同時に存在する状況下で、特定の音声信号に注意を向け、他の信号を無視する能力を指します。

カクテルパーティー効果は、1953年に心理学者のコリン・チェリー氏によって提唱されました。この現象は、騒々しい環境下で会話に集中する能力として、一般的にカクテルパーティーなどの社交場面でよく見られます。

カクテルパーティー効果は、人間の脳が特定の音源(例えば、友人の声)を選択し、背景のノイズや他の人の会話から区別する能力に関連しています。この効果により、私たちは重要な情報に集中できるようになります。

脳の音声処理と注意制御のメカニズムが、カクテルパーティー効果を可能にしています。具体的には、脳の前頭前野や聴覚皮質などが関与しているとされています。また、カクテルパーティー効果は、音声信号の特徴(音量、音色、方向性など)や話者の顔や口の動き、そして聞き手の期待や意識にも影響を受けます。

カクテルパーティー効果

では、カクテルパーティー効果の事例をいくつか紹介していきます。

  1. 電車やバスの中での会話
  2. レストランでの食事
  3. 空港のアナウンスに注意を払う

事例1:電車やバスの中での会話

電車やバスの中は、多くの人が同時に話しているため、騒がしい環境となります。しかし、カクテルパーティー効果により、友人や同僚との会話に集中し、周囲の乗客の声を無視することができます。

事例2:レストランでの食事

レストランでは、他のテーブルでの会話や調理音、背景音楽などが同時に聞こえる環境です。それでも、カクテルパーティー効果により、自分のテーブルでの会話に注意を向けることが可能です。

事例3:空港のアナウンスに注意を払う

空港のターミナルでは、多くの人が話している上に、アナウンスや移動手段の音が響き渡ります。しかし、自分のフライトに関するアナウンスに注意を払い、他の音を無視することができます。これもカクテルパーティー効果のおかげです。

カクテルパーティー効果が発動する理由

まず注意とは何かを理解することが重要です。注意とは、私たちが意識的に特定の情報に焦点を当て、他の情報を無視する能力のことです。この能力によって、私たちは限られた認知リソースを効率的に活用できます。

カクテルパーティー効果は、この注意制御の仕組みが関与している現象です。脳内で注意制御が行われる過程には、初期選択理論・後期選択理論・容量モデル・知覚的負荷理論という4つの異なるアプローチが提案されています。

  • 初期選択理論
  • 後期選択理論
  • 容量モデル
  • 知覚的負荷理論

初期選択理論

この理論は、脳が音声信号を処理する初期段階で注意を向けると考えています。つまり、脳は聞こえてくる音声信号の中から、音量、音色、方向性などの物理的特徴に基づいて目立つ信号を選択し、他の信号を無視します。その結果、選択された信号が認知処理の対象となり、意識に到達することができます。

たとえば、ある騒々しいパーティーに参加しているとします。会場内でたくさんの人が話しており、その中でも特に大きな笑い声がします。この場合、初期選択理論によれば、脳は音声信号の物理的特徴(この場合は、大きな笑い声の音量)に基づいて、その笑い声に注意を向けます。この段階では、音声の内容や意味は考慮されていません。

後期選択理論

後期選択理論は、脳が音声信号を処理する後期段階で注意を向けると考えています。この理論では、脳はまずすべての音声信号を平等に処理し、意味のある情報が抽出された後で、意識的な注意が特定の信号に向けられます。この過程では、話者の顔や口の動き、聞き手の期待や意識が関与しています。

たとえば、同じパーティーで、周囲の会話の中から突然自分の名前が呼ばれるのが聞こえました。この場合、後期選択理論によれば、脳はまずすべての音声信号を平等に処理し、意味のある情報(この場合は、自分の名前)が抽出された後で、意識的な注意がその音声信号に向けられます。

容量モデル

容量モデルとは、人間の注意力が有限であり、同時に処理できる情報やタスクに限界があるという考え方です。このモデルでは、複数のタスクを同時にこなす際、それぞれのタスクに割り当てられる認知リソースが分散されるため、全体的なパフォーマンスが低下することが予測されます。また、注意力が限られているため、あるタスクに集中していると、他のタスクや周囲の情報に気づかなくなることがあります。

たとえば、カフェで友達と会話している際に、同時にスマートフォンでニュース記事を読もうとしています。容量モデルでは、注意のリソースは有限であり、複数のタスクを同時に行うことは難しいとされています。そのため、会話と記事の読解の両方に集中することができず、どちらか一方が犠牲になります。

知覚的負荷理論

知覚的負荷理論とは、タスクの難易度や興味深さが注意力に影響を与えるという考え方です。この理論では、タスクに関連する知覚的負荷が高い場合(例えば、複雑で興味深いタスク)、それに集中するための認知リソースが増え、無関係な刺激に対する注意が低下することが予測されます。逆に、知覚的負荷が低い場合(例えば、単純で退屈なタスク)、認知リソースが余ってしまい、無関係な刺激に気を取られやすくなります。

たとえば、カフェで、友達が非常に興味深い話をしている場合、知覚的負荷理論によれば、その話に注意を向けるための認知リソースが高くなります。その結果、周囲の雑音や他の会話に気を取られることが少なくなり、友達の話に集中できるようになります。

カクテルパーティー効果の実験

心理学者コリン・チェリーのが行った両耳分離聴取課題の実験では、被験者はヘッドフォンを装着し、右耳と左耳に異なる音声信号が同時に提示されます。以下に、実験の手順を詳しく説明します。

  • 実験準備:被験者にヘッドフォンを装着させ、右耳と左耳にそれぞれ異なる音声信号を聞かせる環境を整えます。ターゲットメッセージと無関係な音声信号を録音した音声ファイルが用意されます。
  • タスクの説明:被験者に、片方の耳(例えば右耳)に流れるターゲットメッセージに注意を集中し、その内容を理解するよう指示します。一方、もう片方の耳(例えば左耳)に流れる無関係な音声信号は無視するよう指示されます。
  • 実験開始:実験が開始されると、被験者はヘッドフォンを通じて両耳に異なる音声信号を同時に聞くことになります。被験者は、指示されたターゲットメッセージに注意を集中し、無関係な音声信号を遮断しようとします。
  • レポート:実験終了後、被験者はターゲットメッセージの内容に関して報告します。これによって、被験者がどの程度ターゲットメッセージに注意を集中し、無関係な音声信号を遮断できたかが評価されます。
  • 結果分析:実験者は、被験者の報告内容を分析し、ターゲットメッセージへの注意力と無関係な音声信号の遮断能力について評価します。実験結果をもとに、カクテルパーティー効果のメカニズムや注意に関する理論を検証します。

これにより、上記で説明した初期選択理論が証明されることとなりました。

しかし、この実験には続きがあります。先ほどの実験と内容はほとんど変わらないのですが、次の実験では、注意するように指示されていない話(音声)に被験者の名前をいれるようにします。その時、どれくらいの被験者が、名前入りの音声を理解しているかを調べました。

実験の結果、被験者は、名前を入れた話(注意するように指示されていない話)の方をしっかり理解していたのです。なぜなら、名前を入れることで、そちらに注意が向いてしまったからです。この実験により、初期選択理論が否定され、後期選択理論が有力な説として君臨することとなりました。

カクテルパーティー効果を営業に活用する方法

では、ここからはカクテルパーティー効果を営業に活用する方法について解説します。

  • 名前を呼ぶ

方法:名前を呼ぶ

営業中は、相手の名前を呼ぶことを意識するようにしましょう。なぜなら、名前を呼ぶことで、聞かないと!」という意識づけができるからです。たとえば、顧客の理想をヒアリングする際の事例を見ていきましょう。

  • 「毎月どれくらいの契約を取りたいとお考えですか?」
  • 〜さんは、毎月どれくらいの契約を取りたいとお考えですか?」

プラスαでお伝えしておくと、相手の名前を呼ぶ行為は「社会的報酬」と言われており、相手にプレゼントを送っているのと同じ効果があると言われています。つまり、名前を呼ぶことで、報酬を与えることになるので、そこに返報性の原理が生じ、相手も好意でお返しをしてくれるようになるのです。

カクテルパーティー効果をマーケティングに活用する方法

ではここからは、カクテルパーティー効果をマーケティングに活用する方法について解説します。

  1. 非常に差別化されたコンテンツ
  2. 感情に訴えるストーリーテリング
  3. 文章に名前を入れる

方法1:非常に個別化されたコンテンツ

顧客の興味やニーズに合わせた、個別化されたコンテンツを提供することで、顧客の注意を引くことができます。例えば、Netflixは個々のユーザーの視聴履歴に基づいて、おすすめの映画やドラマを提示します。これにより、ユーザーは自分に関心のあるコンテンツに注意を向けやすくなります。

方法2:感情に訴えるストーリーテリング

感情に訴えるストーリーテリングを用いたマーケティングは、顧客の注意を引くだけでなく、記憶にも残りやすくなります。例えば、Nikeはスポーツ選手のストーリーや挑戦に焦点を当てた広告キャンペーンを展開しています。これにより、顧客は自分にも関係する話題であると感じ、注意を向けやすくなります。

方法3:文章に名前を入れる

メールマガジンやLINEなどで情報を提供する際は、必ず読者の名前を入れるようにしましょう。なぜなら、その方が記事の精読率が高まるからです。たとえば、メールマガジンで一斉送信する際は、ショートコードを使ってユーザーの名前が自動で挿入される仕組みが有効になります。他にも、個別でメッセージを送るのであれば、必ず上記に名前を入れてから、本文に入っていくようにしましょう。

created by Rinker
フォレスト出版
¥1,760 (2024/11/21 14:19:53時点 Amazon調べ-詳細)

まとめ

本日のテーマ

カクテルパーティー効果とは|意味・具体例・活用法を解説

カクテルパーティー効果は、営業やマーケティングに縁がないと感じていた方も多いでしょう。

しかし、実際には、上記活動で活躍する最強の心理法則になりますので、ぜひ本記事を何度も繰り返し読み、あなたの販売戦略の中に入れていくようにしましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です