後知恵バイアスとは、結果を過大評価し、過去を過小評価するという心理現象のことです。
たとえば、日本VSアメリカのサッカーの試合で「絶対に日本が勝つ!」と予想していたのにも関わらず、いざアメリカが勝つと「アメリカが勝つと思っていた!」と意見を変えてしまうことがあります。このように、我々は、目の前の結果を過大評価し、それまでのプロセスを過小評価してしまうという性質を持っています。
しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。本記事では、後知恵バイアスの事例やそれが発動する心理学的理由、またその影響から逃れるための方法などを紹介していきます。
というわけで本日は、
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
後知恵バイアスとは
結果を過大評価し、過去を過小評価するという心理現象
後知恵バイアス(hindsight bias)とは、心理学用語で、過去の出来事について知った後に、その出来事が起こる前からその結果を予測していたかのように感じる認知の歪みのことです。このバイアスは、「私は最初からそうだと思っていた」「当たり前の結果だ」といった感覚を生み出します。後知恵バイアスは、過去の判断や予測を過大評価する傾向があるため、自分の判断力や予測能力を過信してしまうことがあります。
後知恵バイアスは、多くの状況で発生し得ますが、特に投資やビジネス、政治、スポーツなどの分野で顕著に現れることがあります。例えば、株式市場で投資を行った後に株価が上がった場合、投資家は「最初からその株が上がると分かっていた」と感じることがあります。しかし、実際には、投資を行う前にはその結果を確実に予測することはできません。
後知恵バイアスを克服するためには、自分の過去の判断や予測を客観的に評価し、過去の経験から学びを得ることが重要です。また、他者と意見を交換し、多様な視点を持つことも、後知恵バイアスに陥らないための有効な方法です。
後知恵バイアスの具体例
では、後知恵バイアスの具体例をいくつかみていきましょう。
- スポーツの試合の結果
- 株価の変動
- 起業失敗
事例1:スポーツ試合の結果
友人がサッカーの試合の結果を正確に予想した後、他の人が「それは当たり前だった」と感じる場合、後知恵バイアスが働いています。実際には、試合の結果は試合前には確実に予測できないものであり、後から見れば当たり前に思えることが多いです。
事例2:株価の変動
株価が急落した後、投資家が「この会社の株は元々リスクが高かったから当然だ」と考える場合、後知恵バイアスが働いています。事前にリスクが完全に把握できるわけではなく、株価の変動は様々な要因によって左右されるため、後から見れば必然的な結果に思えることがあります。
事例3:起業失敗
友人が起業して失敗した後、「あのビジネスアイデアは最初からうまくいかないと思っていた」と言う場合、後知恵バイアスが働いています。事業の成功はアイデアだけでなく、市場状況、資金調達、実行力など多くの要素に依存します。後から見ると、失敗要因が明確になりやすいですが、事前にその結果を確実に予測することは難しいです。
後知恵バイアスの実験
バルーク・フィッシュホフ氏たちは、1972年のニクソン大統領の中国・ソ連への訪問前にある調査を実施しました。まず、ニクソン大統領が中国・ソ連への訪問する際に起こりうる結果を15項目用意しました。例えば、下記のような出来事です。
次に、被験者たちに、これら15項目が起こる確率を推測してもらいます。
そして、ニクソンが訪問し終え、帰国した後、再び同じ参加者を集め、15項目のそれぞれの確率を思い出してもらいました。
実験の結果、実際に起こった項目に関しては「やっぱりそう思っていた!」と、当初よりもその確率を高く見積もり、実際に起らなかった項目に関しては、当初よりもその確率を低く見積もる傾向がありました。つまり、多くの被験者は「私はそう思っていた!」を貫き通す傾向にあったのです。
後知恵バイアスが発動する理由
後知恵バイアスが発動する心理学的な理由はいくつかありますが、主に以下の3つが挙げられます。
- 結果の明確さ
- 記憶の選択性
- 自分を良く見せたいという欲求
理由1:結果の明確さ
結果が明らかになると、私たちはその結果をもとに物事を説明しようとする傾向があります。結果が分かった後、それが予測可能だったかのように感じるのは、情報が整理され、明確になったためです。これにより、事前に予測が困難だったことを過小評価することがあります。
理由2:記憶の選択性
私たちは、結果に関連する情報を記憶しやすく、関連しない情報は忘れやすいという選択性を持っています。結果が判明した後、関連する情報が強調されることで、その結果が当初から明らかだったかのように感じることがあります。
理由3:自分を良く見せたいという欲求
人間は自分を良く見せたいという欲求を持っており、自分の判断や予測が正しかったと思いたいという心理が働いています。結果が判明した後、自分がその結果を予測していたと考えることで、自己評価を高めようとする傾向があります。
後知恵バイアスのデメリット
後知恵バイアスは、人々の判断や意思決定に悪影響を与える可能性があります。その主なデメリットは以下の通りです。
- 学習の妨げ
- 過去の判断の過大評価
- 他者への評価の歪み
デメリット1:学習の妨げ
後知恵バイアスによって、自分が予測や判断が正しかったと過大評価することがあります。その結果、自分の認識や判断に対する改善点や学習機会を見逃すことがあります。
デメリット2:過去の判断の過大評価
後知恵バイアスは、過去の判断や予測を正確だと過大評価する傾向があります。これにより、自分の能力を過信し、リスクを過小評価したり、過去の成功体験を未来の成功の保証と見なすことがあります。
デメリット3:他者への評価の歪み
他者の失敗や誤りに対して、後知恵バイアスが働くと、「その失敗は予測できたはずだ」と考え、他者を過剰に批判することがあります。これは、他者との関係悪化や、チームでの協力やコミュニケーションの障害を引き起こす可能性があります。
後知恵バイアスから逃れる方法
後知恵バイアスから逃れる方法は完全ではありませんが、以下のアプローチでその影響を軽減することができます。
- 意識的な自己評価
- 状況や情報の文脈を理解する
- 他者の意見を参考にする
- 決定や予測の記録をつける
方法1:意識的な自己評価
自分の判断や意思決定を振り返る際に、客観的に分析し、後知恵バイアスが働いているかどうかを意識的に評価します。ある結果が当たり前だと感じたときに、本当に事前にその結果を予測できたかどうかを自問自答することが大切です。
方法2:状況や情報の文脈を理解する
ある結果が生じた背景や状況を理解し、それがどの程度予測可能だったかを客観的に分析します。また、その時点で利用可能だった情報だけを基に判断を行い、結果が判明した後の情報を無視することが重要です。
方法3:他者の意見を参考にする
他者の意見や視点を取り入れることで、自分だけの視点に偏らず、より客観的な判断ができるようになります。特に、専門家や経験者の意見は、自分自身の後知恵バイアスを補完する役割を果たすことがあります。
方法4:決定や予測の記録をつける
自分の決定や予測を記録しておくことで、後で振り返りやすくなります。これにより、後知恵バイアスが働いているかどうかを客観的に判断しやすくなります。
まとめ
後知恵バイアスとは|「俺はそう思ってた!」が口癖の人は気を付けて!
あなたは、今まで「そう思ってた!」という言葉を何度発してきたでしょうか。もし、これが口癖の方は、今後は後知恵バイアスの影響を意識しながら生活を送るようにしましょう。
後知恵バイアスとは|「俺はそう思ってた!」が口癖の人は気を付けて!