ピーク・エンドの法則とは、あらゆる経験の快楽・苦痛は、「絶頂時」と「終了時」の快楽・苦痛の度合いで決まるという法則です。
たとえば、テーマパークでは、ひとつのアトラクションを楽しむために、長時間並ぶという苦痛に耐えなければなりません。
しかし、アトラクションを楽しんだ後の多くは「楽しかった!」という感情になりますよね?
つまり、「長時間並んでいた」という苦痛がかき消されてしまったわけです。
しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
というわけで、本日は
- ピーク・エンドの法則とは
- 2つの自己とは
- ピーク・エンドの法則を営業に応用する方法
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
ピーク・エンドの法則とは

あらゆる経験の快楽・苦痛は、「絶頂時」と「終了時」の快楽・苦痛の度合いで決まるという法則
ピーク・エンドの法則のポイントは、経験の快楽・苦痛は「経験の長さ」によって決まるのではなく、その「絶頂時」と「終了時」で決まるということです
ピーク・エンドの法則は、1999年に行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が提唱したものになります。
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ピーク・エンドの法則の具体例
では、いくつか具体例を紹介しましょう。
例1:別れた恋人との思い出
別れた恋人のことを思い出してみてください。
思い出として頭に蘇るのはだいたい「すごく楽しかったこと」「すごく悲しかったこと」「別れた時のこと」ではないでしょうか?
このように、別れた恋人への印象は、「絶頂時」と「終了時」で決まるんですよね。
だから、嫌な別れ方をしたら(終了時)、それを最悪の思い出として捉えるようになるのです。
例2:テーマパーク
ディズニーランドなどのアトラクションを楽しむためには、何時間も行列に並ばなければならないことがほとんどです。
アトラクションを楽しめるのは5分ほどですが、並ばなければならないのは1時間ほどです。
しかし、一度アトラクションを楽しめば、並んでいた「苦痛」も全てかき消されてしまいます。
なぜなら、「アトラクションを楽しんでいる時間(絶頂時)」と「アトラクションの終わり際(終了時)」が快楽・苦痛を決めるからです。
例3:映画
映画が「面白い」と「つまらない」かもピーク・エンドの法則に依存しています。
仮に、途中までがものすごく退屈な内容だったとしても、「絶頂時」と「終了時」が衝撃的なものであれば、その映画の評価は「面白い」となるのです。
これは、映画の印象にも大きな影響を与えます。
たとえば、悲しい終わり方の映画であれば「悲しい映画だった」という印象になりますし、楽しい終わり方の映画であれば「楽しい映画だった」という印象になります。
>>スウィニートッド フリート街の悪魔の理髪師

オータニはジョニー・デップ主演の『スウィニートッド フリート街の悪魔の理髪師』という映画が大好きなのですが、
途中までは「残酷」という印象を抱き続けるのですが、最終的には「悲しい」という印象に変わる映画なんですよね。
ピーク・エンドの法則の実験

では、ピーク・エンドの法則を証明した実験を紹介します。
実験:ダニエル・カーネマン
手順1
ダニエル・カーネマンは、被験者に次の2つの体験をしてもらいました。
- 冷たい水に60秒間片手をひたしてもらう(短い苦痛)
↓ - 冷たい水に60秒間片手をひたしてもらい、続けて30秒間1度温かくなった水にひたしてもらう(長い苦痛)
手順2
次に、被験者に3回目の実験を行うと告げ、「1回目か2回目のどちらがいい?」という質問しました。
その時、どれくらいの被験者が、どちらを選択するのかを調べます。
実験の結果
結果、80%以上の人たちが②を選択するという結果となりました。
つまり、「短い苦痛」よりも「長い苦痛」を選択したのです。
なぜなら、ピーク・エンドの法則により「短い苦痛」の方は「悪い記憶」として残ってしまったからです。
普通に考えたら「長い苦痛」よりも「短い苦痛」の方が良いですよね?
しかし、ピーク・エンドの法則により記憶が捏造され、誤った判断をしてしまったのです。
2つの自己:ピーク・エンドの法則

ダニエル・カーネマンは、「われわれには、2つの自己が存在する」といいます。
- 体験する自己
- 記憶する自己
体験する自己
「体験する自己」とは、その瞬間の自分のことです。
たとえば、「今の気分はどうですか?」という質問は、「体験する自己」についての質問です。
記憶する自己
「記憶する自己」とは、過去を評価している自分のことです。
たとえば、「最近何か良いことはありましたか?」という質問は、「記憶する自己」についての質問です。
「体験する自己」と「記憶する自己」の関係
結論、ピーク・エンドの法則とは、「体験する自己」が「記憶する自己」に塗り潰されてしまうという現象です。
例:恋愛
たとえば、恋愛をしているその瞬間(体験する自己)は幸せなわけです。
しかし、仮にひどい別れ方をしてしまったら、
ネガティブな記憶が強化されるため、「記憶する自己」が「体験する自己」をネガティブなものとして評価するようになります。
ピーク・エンドの法則と関連した心理学

- 初頭効果
- 親近効果
心理学1:初頭効果
最初の印象が記憶に残りやすいという心理現象
例:親戚の子供
たとえば、親戚の子供が大きくなって久しぶりに会うと、子供の時の印象が強く、大人になった姿でも「可愛い」と感じてしまいますよね?
心理学2:親近効果
最後の印象が記憶に残りやすいという心理現象
例:ウエイターの謝罪
たとえば、あるお店で注文したドリンクがなかなか来なくて、嫌な気持ちになったとします。
しかし、最後にお店から「大変失礼いたしました」とお詫びされると、その印象が強く残り、ポジティブな評価に変わりますよね?
動画にしました
ピーク・エンドの法則を営業に活用する方法


- 感謝の言葉を伝える
- お見送りをする
- 入り口は腰を低くして、去り際は正々堂々とする
- 謝罪をする
- 接触回数を増やす
- PREP(プレップ)法を意識してプレゼンする
コツ1.感謝の言葉を伝える
「去り際」の行動はかなり重要です。
たとえば、去り際に「本日はお時間いただき、本当にありがとうございました!」と感謝の言葉を伝たえることで、ポジティブな印象を残すことができるようになります。
最後まで気を抜かないようにしましょう。
コツ2.お見送りをする
カフェなどで話をしているのであれば、必ず出口まで見送るようにしましょう。
なぜなら、顧客に対して「親切」という印象を残すことができるからです。
このような小さな気遣いが大切ですね。
コツ3.謝罪をする
もしも、遅刻をしてしまったり、失礼なことを言ってしまった場合、最後にしっかり謝罪をすることを忘れないようにしましょう。
たとえば、あなたがレストランにいって、店員が注文を間違えてしまったとします。
しかし、最後に「今回は大変失礼いたしました」と謝罪されると嬉しい気分になりますよね?
だから、商談中に何かネガティブな出来事があったら、去り際に必ず謝罪するようにしましょう。
コツ4.入り口は腰を低くして、去り際は堂々とする
入り口は、顧客とアイスブレイク をしなければならないので、ある意味腰を低くすることが大切です。
しかし、次回の商談に繋げるためにも、去り際は堂々とした印象を与えるようにしましょう。
非言語コミュニケーションを意識する
でもどうやって、そのような印象をコントロールすればいいのでしょうか?
結論、非言語コミュニケーションをコントロールしましょう。
- ボディーランゲージ
- 話すスピード
- 話すリズム
- 声の大きさ
- 声の高さ
- 声のトーン
もしも、非言語コミュニケーションについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてもらえればと思います。
コツ5.接触回数を増やす
他者から好意を得たいのであれば、接触回数を増やしましょう。
なぜなら、われわれには、接触回数が多い対象に好意を感じる性質があるからです。
これを、ザイアンス効果(単純接触効果)といいます。
接触時間<接触回数
ポイントは、好意を獲得するうえで大切なことは、「接触時間」よりも「接触回数」ということです。
たとえば、「月に1回5時間」と「月に5回1時間」の場合を比べて見ましょうか。
残っている記憶の数=2つ(絶頂時と終了時)
残っている記憶の数=10個(絶頂時と終了時×5)
このように、接触回数が多い方が、相手の記憶に残せる数が多くなります。
コツ6.「PREP法」を意識してプレゼンする
何かを主張する際は、PREP(プレップ)法を使いましょう。
- 主張
↓ - 理由
↓ - 具体例
↓ - 主張
この順番で話をすることで、説得力を高めることができるようになります。
ポイント:主張でサンドイッチ
「PREP(プレップ)法」のポイントは、最後の「主張」です。
なぜなら、最後にもういちど最初の「主張」を繰り返すことで、顧客の記憶に残すことができるからです。
なので、最初の主張は、必ず最後にもう一度伝えるようにしましょう。
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まとめ:ピーク・エンドの法則
では最後にまとめましょう。
本日は、
- ピーク・エンドの法則とは
- 2つの自己とは
- ピーク・エンドの法則を営業に応用する方法
というテーマでブログを執筆しました。
ピーク・エンドの法則により、人間は思わぬ錯覚を起こしてしまうということは理解していただけたのではないでしょうか?
なので、営業をする際、ストーリーを語る際、プレゼンテーションをする際は、ぜひ「絶頂時」と「終了時」を意識するようにしましょう。
もしも、その他の人間の錯覚について知りたい方は、下記の記事なども参考にしてもらえればと思います。