心理的リアクタンスとは、自由を制限されるほど、その自由を取り戻そうとする心理現象のことです。
たとえば、「絶対に見るなよ!」と言われたら、それが気になってしかたがなくなりますよね。他にも、「親から勉強しなさい!」と言われて、イライラした経験はないでしょうか。このように、我々は自由を制限されると、反射的にそれを取り戻そうとする心理が働きます。
しかし、なぜこのような現象が起きるのでしょうか。本記事では、心理的リアクタンスが発動する心理学的理由、またそれを営業やマーケティングに活用する方法などを紹介していきます。
というわけで本日は
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
心理的リアクタンスとは
自由を制限されると、その自由を取り戻そうとする心理現象
心理的リアクタンス(Psychological Reactance)は、人々が自由を失うか、制限されると感じたときに生じる心理的な反応です。この現象は、1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレムが提唱しました。心理的リアクタンス理論では、個人の自由が制限されると、その制限に反発して自由を回復しようとする動機が生まれると説明されています。
心理的リアクタンスは、広告やマーケティング、健康促進活動、対人関係など、さまざまな分野で研究されています。理解と適切な対応が重要であり、リアクタンスを抑制する方法や、効果的なコミュニケーション戦略が開発されています。
心理的リアクタンスの具体例
ではいくつか具体例をみていきましょう。
- 親からの制限
- 禁止された恋愛
- 商品の限定販売
事例1:親からの制限
親が子どもに厳しく勉強を強制すると、子どもは反発して勉強を嫌がるようになることがあります。この場合、子どもは自分の選択肢や自由が制限されたと感じ、反発することでその制限から逃れようとします。
事例2:禁止された恋愛
カップルが周囲の反対や制限に直面した場合、その恋愛に対する情熱がさらに高まることがあります。この現象は、「ロミオとジュリエット効果」とも呼ばれ、心理的リアクタンスによって、禁止された恋愛への魅力が増すことが示唆されています。
事例3:商品の限定販売
ブランドがある商品を限定販売すると、消費者はその商品を手に入れるために熱心に行動することがあります。これは、消費者が自分の購入の自由が制限されていると感じ、その制限に反発して商品を手に入れようとする心理的リアクタンスが働いていると考えられます。
心理的リアクタンスの実験
心理的リアクタンス理論を説明する有名な実験の一つは、ペンシルバニア州立大学の心理学者ジョン・ペンネバッカーによる「ビーチ・トラッシュ」実験です。この実験では、公園のゴミ箱に設置された看板の文言が、人々の行動にどのような影響を与えるかを調査しました。
実験者は、公園内のゴミ箱に2種類の看板を設置しました。
- 強制的なメッセージの看板:「このゴミ箱を使わなければ、罰金が科せられます」
- 自由な選択を促すメッセージの看板:「このゴミ箱を使って、公園をきれいに保ちましょう」
その後、実験者は、どちらの看板が設置されたゴミ箱の周辺でゴミが落ちている量を観察しました。
実験の結果、強制的なメッセージの看板が設置されたゴミ箱の周囲では、ゴミがより多く落ちていました。一方、自由な選択を促すメッセージの看板が設置されたゴミ箱の周囲では、ゴミが少なかったです。
この実験結果は、心理的リアクタンスの影響を示しています。強制的なメッセージによって、人々は自分の選択肢や行動の自由が制限されたと感じ、ゴミを捨てることに反発する傾向があることがわかります。
一方、自由な選択を促すメッセージによって、人々は自分の意志でゴミ箱を使い、公園をきれいに保つことができます。この実験は、心理的リアクタンス理論を適用することで、効果的なコミュニケーション戦略を開発することが可能であることを示しています。
心理学的リアクタンスが発動する理由
心理的リアクタンスが発生する理由を初心者にも分かりやすく説明すると以下のようになります。
人間は自由を大切にし、自分で選択肢を選び、行動を決めることが好きです(自己統制感)。しかし、他の人や状況がその自由を制限しようとすると、不快な気持ちが生じます。この不快な気持ちが心理的リアクタンスです。
たとえば、友達があなたに「絶対にこの映画を見なさい」と言ったとします。あなたは、自分の意志で映画を選ぶ自由が奪われていると感じるかもしれません。その結果、心理的リアクタンスが発生し、その映画を見ることに反発したり、興味を失ったりすることがあります。
このように、心理的リアクタンスは、自由が制限されると感じたときに生じる不快な気持ちと、その制限から逃れようとする反発の動機です。この現象を理解し、適切な対応を行うことで、より効果的なコミュニケーションができるようになります。
心理的リアクタンスを営業に活用する方法
では、ここからは、心理的リアクタンスを営業に活用する方法をいくつか紹介します。
- 限定販売・期間限定セール
- 消費者に選択肢を提供する
- 口コミ・推薦を活用する
方法1:限定販売・期間限定セール
心理的リアクタンスを利用して、商品の限定販売や期間限定のセールを実施することで、消費者がその商品やサービスを手に入れるために熱心に行動するようになります。
たとえば、あるアパレルブランドが、期間限定のセールを実施し、「今日だけ50%オフ!」と告知することで、消費者は自分の購入の自由が制限されていると感じ、その制限に反発して商品を手に入れようとします。
方法2:消費者に選択肢を提供する
営業では、消費者に選択肢を提供し、自由に選択できるようにすることで、心理的リアクタンスを回避できます。
たとえば、インターネットサービスプロバイダーが、複数のプランを提供し、消費者に自由に選択させることで、制限された選択肢によるリアクタンスを減らし、契約の確率を高めることができます。
方法3:口コミ・推薦を活用する
他の人からの口コミや推薦を利用することで、消費者に直接プッシュせずに商品やサービスの魅力を伝えることができ、心理的リアクタンスを回避します。
たとえば、あるレストランが、満足度が高い顧客からの口コミや評価をウェブサイトや広告に掲載することで、新規の消費者に間接的に商品やサービスの魅力を伝え、心理的リアクタンスを避けることができます。
心理的リアクタンスをマーケティングに活用する方法
では、ここからは、心理的リアクタンスをマーケティングに活用する方法をいくつか紹介します。
- 限定品や数量限定商品の宣伝
- 社会的証明を活用する
方法1:限定品や数量限定商品の宣伝
限定品や数量限定商品を宣伝することで、消費者がそれを手に入れるために熱心に行動するようになります。
たとえば、あるスニーカーブランドが、「限定300足のスペシャルエディションを今週発売します。数量限定なので、お早めに!」と告知することで、消費者は選択肢が制限されていると感じ、リアクタンスが生じ、熱心に商品を手に入れようとします。
方法2:社会的証明を活用する
他の人々の意見や評価を利用して、消費者に製品やサービスの価値を間接的に伝えることで、心理的リアクタンスを回避します。
たとえば、あるオンラインストアが、商品ページに「この商品は10,000人以上のお客様にご満足いただいています!」というメッセージを掲載することで、消費者は他の人々の意見に基づいて製品の価値を評価し、心理的リアクタンスが発生しにくくなります。
まとめ
心理的リアクタンスとは|制限を利用した説得の心理テクニック
心理的リアクタンスを効果的に活用することができれば、無理な販売を防ぐことができるようになります。
営業無理な押し売りをすることがなくなり、マーケティングではクリック率や成約率を大きく高めることに繋がります。
まだ、心理的リアクタンスを防ぐための施策が出来ていないのであれば、すぐにスタートするようにしましょう。
心理的リアクタンスとは|制限を利用した説得の心理テクニック