双曲割引とは、「目の前の価値」を優先して、「遠い未来の価値」を割り引くという心理傾向のことです。
たとえば、「今から1万円をもらう」のと、「1ヶ月後に1,2万円をもらう」のとでは、どちらがいいですか?
びっくりするかもしれませんが、この質問に対して多くの人たちは前者(1万円)を選ぶ傾向があります。
このように、我々には、将来を売り飛ばし、目の前の誘惑に従ってしまうという本能があります。
しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
というわけで本日は、
- 双曲割引とは
- 双曲割引の具体例
- 双曲割引を攻略する方法
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
双曲割引とは
「目の前の価値」を優先して、「遠い未来の価値」を割り引くという心理傾向
※これは行動経済学の用語で、経済学では「遅延による価値割引」なんていわれます
ある研究では、「3ヶ月後にもらう100ドル」と「今この瞬間にもらう83ドル」は同じ価値だと感じる人が多いということが分かっています。
つまり、3ヶ月後という時間が、17ドルの割引を発生させたということですね。
双曲割引の具体例
では、いくつか具体例をみていきましょう。
- 今日のりんごと明日のりんご
- 目の前のショートケーキ
- facebook中毒
例1:今日のリンゴと明日のリンゴ
さて、あなただったら、どちらを選ぶでしょうか?
普通に考えれば、後者を選択するでしょう。
なぜなら、1日待っただけで、リンゴをもう1つ手にすることができるからです。
しかし、実際はというと、多くの人たちが「今日、リンゴ1つ」を選択するということが分かっています。
つまり、「今日、リンゴ1つ」という「目の前の欲求」を優先して、「明日、リンゴ2つ」の価値が割引かれてしまうからです。
例2:目の前のショートケーキ
あなたは、ダイエットに励んでいたとする。
しかし、目の前に大好きなショートケーキを出されたら、それに耐えられる自信はありますか?
きっと、多くの人は「目の前のショートケーキ」に屈してしまうでしょう。
なぜなら、「目の前の欲求」によって、「ダイエットをしてキレイになる!」という将来の価値が割引かれてしまうからです。
ダイエットに失敗する人たちの多くは、双曲割引によるところが大きいと言えますね。
例3:facebook中毒
「勉強したいけど、なかなか手につかない…」なんて経験をしたことはありませんか?
もしも、なかなか手につかないのであれば、それはSNSによる影響が大きいかもしれません。
たとえば、読書をしている中、あなたの携帯にLINEの通知が来たとする。
きっと、あなたはLINEの通知が気になって仕方がなくなり、読書を中断し、携帯を手に取り、アプリを開くでしょう。
なぜなら、「LINEを確認したい!」という「目の前の欲求」によって、「勉強をして試験に合格する!」という将来の価値が割り引かれてしまうからです。
双曲割引はなぜ発動するのか
でも、なんで双曲割引なんていう現象が起こるの?
結論:ドーパミン
「動機付け」となる脳内ホルモンのこと
ドーパミンが脳内に分泌されると「目の前の対象をどうしても手に入れたい!」と思うようになります。
例:様々な欲望
たとえば、大好きなショートケーキを目にすると、「食べたい!!!」と感じるようになりますし、
他にも、携帯電話が目に入れば、「facebookいじりたい!!!」「LINEを確認したい!!!」という欲求が爆発します。
つまり、「誘惑物」が目に入ることで、ドーパミンが分泌され、それにより「その欲求を満たしたい!」と思うようになるということです。
- 誘惑物が目に入る
↓ - 脳内にドーパミンが分泌される
↓ - 対象を「欲しい!」と感じる
ドーパミンの活躍
こう考えると、ドーパミンに対してネガティブなイメージを抱く人もいるとは思いますが、
実は、ドーパミンのおかげで、我々はサバンナ時代を生き抜くことができました。
例:木の実
たとえば、目の前に「木の実」が成っていたとします。
すると、ドーパミンが分泌され、「なんてしても、この木の実をゲットするぞ!」とやる気を高めることができたのです。
しかし、ドーパミンが分泌されなかったどうなるでしょうか?
きっと、スルーしてしまうことになるでしょう。
つまり、我々はドーパミンのおかげで、命を繋ぎ止めることができ、あなたはそのおかげでこの記事を読めているのです。
実験:グル・デニーズ・サラリー
狩猟採集民の人たち(サバンナ時代の人たち)には、「未来」という感覚が薄く、「現在」に価値を置くという推測のもと
ロンドン大学のグル・デニーズ・サラリー氏が、コンゴで暮らすピグミー族の「時間割引率」を調査しました。
実験の結果
結果、ピグミー族の「時間割引率」は、今後の都市部で暮らす人たちと比べると5倍近くだということが分かりました。
つまり、目の前の欲求に屈してしまうということですね。
考察としては、いつ食糧が手に入るか分からない狩猟採集時代には、「待つ」ということは危険な戦略だったためだと考えられます。
双曲割引の実験
1960年代後半にスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミッシェルは、4歳児を対象に、マシュマロを使って誘惑するという実験を行いました。
子供を一人ずつ実験室に入れ、「鐘」「マシュマロが1つ載ったお皿」「マシュマロが2つ載ったお皿」が置かれたテーブルに着座させます。
次に、実験者は、子供たちに下記のように告げて部屋をでます。
「ちょっとここを離れるけど、戻るまで待っててくれたら、マシュマロを2個食べていいよ。
待つのがいやなら、この鳴らせばすぐに戻って来るけど、でもその時はマシュマロを1つしか食べれないよ。」
この時、子供たちがどれくらいの時間で鐘を鳴らすか?もしくはマシュマロを食べてしまうか?を計測しました。
結果、2つのマシュマロを待てる子供たちの平均時間は「6分」でした。
しかし、子供たちの中でもかなり差があって、子供たちの1/4以上は「2分」で誘惑に屈し、25%は10分以上我慢できました。
10年後に追跡調査をしたところ、「マシュマロをどれくらい待てたか?」ということが、「学業成績」と「社会的成功」と相関関係があるということが分かりました。
15分間マシュマロを待つことができた子供たちは、人気が高くて成績もよく、ストレスに対して上手く対処し、SAT(学力テスト)でのスコアも高かったのです。
つまり、価値の割引率が低い子供は、将来有望になる可能性が高くなるということですね。
双曲割引を攻略する方法
- 「意志力(ウィルパワー)」を鍛える
- 「自己連続性」を高める
- 「環境」を設計する
方法1:「意志力(ウィルパワー)」を鍛える
自己コントロール力のこと
※より具体的にいうと「誘惑に抗うための力」のことです
例:目の前のショートケーキ
たとえば、ダイエットをしているのに、目の前のショートケーキの誘惑に負けてしまう人は「意志力」が弱いと言えます。
事実:意志力(ウィルパワー)は鍛えられる
「意志力」があるかないかは、人によって違うし、そもそも生得的に決まっているものなので、仕方がないのでは?
こんなことを思った人もいるのではないでしょうか?
結論、「意志力(ウィルパワー)は筋肉のように鍛えることができる!」ということが数々の研究で分かっています。
方法2:「自己連続性」を高める
「現在の自己」と「未来の自己」の心理的距離のこと
例:5年後の自分
たとえば、「5年後の自分を想像してください」と言われた時、自己連続性が高い人は、「現在の自己」と「将来の自己」に密接な関係を見出すことができます。
一方で、自己連続性が低い人は、「未来の自己」のことをまるで他人事のようにしか捉えることができません。
自己連続性と双曲割引
2009年にスタンフォード大学のブライアン・ナットソン氏の研究によると、
自己連続性の高い人は、そうでない人と比べて貯金額が25%も高くなるということが分かっています。
つまり、目の前の「欲しいモノにお金を使いたい!」という欲求に屈することができる人たちが多いということですね。
このように、自己連続性が高いほど、自己コントロール力が高くなるのです。
解決策:「将来の自己」を想像する
ではどうすれば、自己連続性を高めることができるのでしょうか?
結論、「将来の自己」を想像しましょう。
ある実験では、ポテチをやめられない被験者を対象に、将来の自分の姿を二通り想像してもらいました。
- 定期的にエクササイズを行っていて、健康で活気あふれた理想的な姿
- 体をほとんど動かさず、健康上の問題で苦しんでいる恐ろしい姿
結果、どちらの被験者も、2ヶ月後には未来の自分を想像しなかったグループよりも、頻繁に運動するようになっていたのです。
つまり、どちらにしても、将来の自分を想像することは、目の前の欲求に打ち勝つ上で効果的だということですね。
方法3:環境を設計する
「誘惑物」が見えない・聞こえないという環境を設計しましょう。
なぜなら、結局のところ「誘惑物」が知覚されなければいいからです。
方法1:読書
読書をしている時に、携帯にLINEの通知が来て、携帯を手にとってしまうなんてことありますよね?
つまり、「LINEをチェックしたい!」という誘惑に屈したわけです。
ではこのようにならないためには、どうすればいいのでしょうか?
簡単です。携帯の電源を切ればOKです。(通知をOFFにする)
すると、通知が見えない・聞こえない・感じない状態を作ることができるので、「誘惑物」の存在が知覚されなくなります。
方法2:仲間を変える
意志力(ウィルパワー)は伝染するということが分かっています。
つまり、意志力(ウィルパワー)が弱い人ち一緒にいると、自分の意志力(ウィルパワー)も低下してしまうのです。
たとえば、ダイエットに挑戦しようとした時、周りにデブの人たちがいると、それにつられて誘惑に屈しやすくなります。
だから、その場合は「痩せた友達」「ダイエットを頑張っている友達」と積極的に絡むようにしましょう。
このように、友達も「誘惑物」となり得るということを忘れないでください。
つまり、「類は友を呼ぶ」とはこのことです。
まとめ:双曲割引
では最後にまとめましょう。
本日は、
- 双曲割引とは
- 双曲割引の具体例
- 双曲割引を攻略する方法
というテーマでブログを執筆しました。
目の前の誘惑に屈することで、あなたの目標はどんどん目の前から遠ざかることになります。
なので、普段から「いかにすれば、誘惑に打ち勝つことができるか?」を意識しながら生活するようにしましょう。