初頭効果とは、最初に触れた情報が記憶に強化されやすいという心理傾向のことです。
たとえば、英単語を覚える際に、最初の単語は記憶されていることが多いですが、後半のものについては、忘却されていることがほとんどですよね。
他にも、印象形成での事例を出すと、親戚の子供が大きくなって久しぶりに会うと、子供の時の印象が強く、大人になった姿でも「可愛い」と感じてしまいますよね。
このように、例外はありますが、我々の脳は、最初に触れた情報が記憶に強化されやすいようにできています。例外については、後ほどお伝えしていきます。
しかし、なぜ我々の脳は、最初の情報が記憶に強化されやすいのでしょうか。本記事では、初頭効果の心理学的、脳科学的メカニズムを解説していくとともに、それを営業やマーケティングに活用する方法についても紹介していきます。
というわけで本日は
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
初頭効果とは
最初に触れた情報が記憶に強化されやすいという心理傾向のこと
初頭効果(primacy effect)とは、心理学において、人が情報を学ぶ際、最初に提示された情報が記憶に残りやすいという現象です。例えば、あるリストや情報の羅列があった場合、その最初の部分にある情報が、後半部分よりも記憶しやすい傾向があります。
この現象は、情報処理の過程で最初の情報が強調され、注意力が集中されることにより生じます。初心者にとっても重要な概念であり、学習や情報伝達の際に初頭効果を考慮することで、効果的な方法で情報を覚えたり、他人に伝えたりすることができます。
初頭効果の具体例
では、ここからは、初頭効果の具体例をいくつか紹介していきます。
- 買い物リスト
- 自己紹介
- ニュース番組
事例1:買い物リスト
スーパーマーケットで買い物をする際、リストに書かれた最初の数点の商品は、リストの後半部分よりも記憶に残りやすく、買い忘れにくいとされています。これは初頭効果の一例です。
事例2:自己紹介
グループでの自己紹介の場面では、最初に名前を言った人の顔や名前が、他の参加者よりも記憶に残りやすいことがあります。これも初頭効果が働いています。
事例3:ニュース番組
テレビやインターネットのニュース番組で、最初に伝えられるトップニュースは、後続のニュースよりも視聴者の記憶に残りやすいです。これは、初頭効果によって最初の情報が強調されるためです。
なぜ初頭効果が発動するのか
初頭効果が発動する理由は、心理学的および脳科学的な要因が組み合わさっています。以下に、初心者にも分かりやすいように両方の視点から解説します。
- 心理学的視点
- 脳科学的視点
心理学的視点
初頭効果が発生する理由の一つは、注意と記憶の関係にあります。新しい情報が提示されると、私たちはその情報に注意を向けます。最初に提示された情報に対して、注意力が集中しやすいため、記憶に定着しやすくなります。また、最初の情報は他の情報がまだ入ってこない段階なので、情報の混乱が少なく、記憶に定着しやすくなります。
脳科学的視点
脳の視点から見ると、初頭効果は主に海馬という記憶を処理する部分に関連しています。最初に提示される情報は、海馬がまだ情報の処理に余裕がある段階で届くため、より丁寧に記憶のエンコード(情報の記憶形式への変換)が行われます。しかし、続く情報が次々に提示されると、海馬が新たな情報の処理に追われるため、後半の情報ほど記憶のエンコードが劣ることがあります。その結果、最初の情報が記憶に残りやすくなります。
このように、心理学的および脳科学的な要因が組み合わさって、初頭効果が発生することが説明されています。初頭効果を理解することで、学習方法や情報伝達手法を効果的に工夫することができます。
初頭効果の実験
エリザベス・ロフタスとジョン・パーマーが1975年に行った車の衝突実験は、言語の表現が目撃者の証言に影響を与える方法を調査しました。この実験は二つの異なるパートから構成されています。
パート1
被験者は複数の車の衝突事故の映像を見せられました。その後、被験者はいくつかの質問に答えるよう求められました。重要な質問は「車はどれくらいの速さでぶつかったと思いますか?」で、ただし被験者によって動詞が異なりました。例えば、「ぶつかる」「ぶつける」「衝突する」「接触する」など。
結果として、使用された動詞が被験者の推定速度に影響を与えました。「ぶつける」と言われた被験者は、「接触する」と言われた被験者よりも速度を高く推定しました。
パート2
実験1と同様に、被験者は衝突事故の映像を見せられ、質問に答えるよう求められました。しかし、今回の目的は、一週間後に被験者が事故についてどのように記憶しているかを調査することでした。特に、事故時にガラスが割れていたかどうかに焦点を当てました。
結果として、使用された動詞が強いほど(例:「ぶつかる」)、被験者はガラスが割れていたと記憶する傾向が高まりました。実際には、映像には割れたガラスは映っていいなかったのにです。
この実験は、質問の冒頭で提示された情報(この場合は動詞)が、初頭効果によって記憶に強く残り、その後の証言や記憶に影響を与えることを示しています。この研究は、法廷での目撃者の証言の信頼性や、情報の提示方法が記憶に与える影響に関する重要な知見を提供しています。
初頭効果と新近効果
初頭効果と新近効果は、時には矛盾するように見えるものの、異なる状況や条件下で発動します。以下に、それぞれの効果が発動するケースについて説明します。
初頭効果が発動するケース
ケース1:学習や情報の提示が一度に行われる場合
被験者に一度に多くの情報を提示する実験(例: 単語リストや数字リスト)では、最初に提示された情報が記憶に定着しやすいことが観察されます。
ケース2:長期記憶の形成
長期記憶を形成する際、最初に経験した事象や学んだ情報は、後に学んだ情報よりも記憶に定着しやすくなります。たとえば、最初に覚えた外国語の単語やフレーズは、後に学んだものよりも記憶に残りやすいです。
ケース3:第一印象
人間関係において、第一印象は非常に重要であり、その後の交流に大きな影響を与えます。初対面の人に対して、最初に抱いた印象がその後の評価に影響を与えることが多いです。
新近効果が発動するケース
最後に触れた情報が記憶に強化されやすいという心理傾向のこと
ケース1:短期記憶の形成
短期記憶に関しては、最後に提示された情報が記憶に定着しやすいことが観察されます。例えば、電話番号や指示事項を一度だけ聞いた後、すぐに思い出す場合、最後に聞いた情報がより鮮明に思い出されます。
ケース2:情報の更新
新しい情報が入手されると、それが過去の情報と置き換えられることがあります。たとえば、ニュースや天気予報を聞いた後、最新の情報が古い情報よりも記憶に残りやすくなります。
ケース3:連続的な情報の提示
情報が連続的に提示される場合(例: プレゼンテーションや講義)、リスナーは最後に聞いた情報を最も鮮明に記憶しています。これは、短期記憶が最後に聞いた情報を保持しやすいことが原因です。
初頭効果を営業に活用する方法
ここでは、初頭効果を営業に活用する方法をいくつか紹介していきます。
- 顧客との初対面で好印象を与える
- プレゼンテーション
方法1:顧客との初対面で好印象を与える
営業活動において、顧客との初対面で好印象を与えることが重要です。たとえば、適切な服装や身だしなみ、礼儀正しい言葉遣いや態度で、顧客に対してプロフェッショナルで信頼できる印象を与えることができます。顧客はその第一印象を基に、後の営業活動や提案内容に対する評価を形成することが多いです。
方法2:プレゼンテーション
プレゼンテーションの初めの部分に最も重要な情報を置くことで、お客様が重要な情報を記憶しやすくします。たとえば、自社の商品が競合他社と比較してどのような利点があるか、独自の技術や特長を最初にアピールすることで、顧客の興味を喚起し、良い印象を与えることができます。
初頭効果をマーケティングに活用する方法
ここでは、初頭効果をマーケティングに活用する方法をいくつか紹介していきます。
- 強力な広告キャッチコピーの使用
- 効果的なウェブサイトのデザイン
- メールマーケティングの件名の工夫
方法1:強力な広告キャッチコピーの使用
広告やプロモーション素材において、最初に目に入るキャッチコピーは非常に重要です。魅力的で印象的なキャッチコピーを使用することで、顧客の関心を引き付け、商品やサービスに対する好奇心を引き出すことができます。
たとえば、1988年に開始された「Just Do It」キャンペーンは、ナイキの革新的なスポーツウェアやスニーカーを宣伝するための広告戦略でした。キャッチコピー「Just Do It」は、シンプルで強力なメッセージであり、消費者に対して行動を起こすことを促す効果がありました。このフレーズは、スポーツにおける勝利や自己改善、そして日常生活におけるチャレンジを乗り越える勇気を象徴していると広く受け止められました。
方法2:効果的なウェブサイトのデザイン
オンラインマーケティングにおいて、ウェブサイトのデザインは顧客の第一印象を左右します。明確で簡潔なメッセージ、魅力的なビジュアル、使いやすいナビゲーションなどを用いて、訪問者に良い印象を与えることが重要です。
例えば、Airbnbのウェブサイトは、美しい写真やシンプルなデザインを使用して、訪問者に魅力的な滞在先を提案する印象を与えます。
方法3:メールマーケティングの件名の工夫
メールマーケティングにおいて、顧客が最初に目にする件名は、メールを開封するかどうかを決定する重要な要素です。興味を引く、情報が伝わる、適切な長さの件名を使用することで、顧客がメールを開封し、内容を確認する可能性が高まります。
例えば、特別な割引や限定オファーを伝える件名は、顧客の関心を引き付ける効果があります。
まとめ
初頭効果とは|第一印象が相手に与える影響を心理学的に徹底解説
普段、あなたは第一印象を意識して営業活動をしていますでしょうか。今まで第一印象が大事だと言われていても、素直に受け入れられないこともあったでしょう。
しかし、本記事を読んでいただいたことで、その重要性に改めて気づけたはずです。営業トークばかりに注目するのではなく、まずは見た目から変えてみるようにしましょう。
初頭効果とは|第一印象が相手に与える影響を心理学的に徹底解説