バーナム効果とは、誰にでも当てはまるようなことを、特に自分に当てはまっていると勘違いしてしまう心理現象です。
たとえば、「血液占い」「動物占い」「占星術」「手相占い」などを信じる人たちは、バーナム効果の影響を露骨に受けていると言えるでしょう。しかし、なぜ我々の多くは、上記のような非科学的なことを信じてしまうのでしょうか。
この記事では、なぜバーナム効果が発動するのか、という心理的構造、また営業やマーケティングに活用する方法まで詳しく解説していきます。ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。
というわけで本日は、
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
バーナム効果とは
誰にでも当てはまるようなことを、特に自分に当てはまっていると勘違いしてしまう心理現象
バーナム効果(Barnum effect)は、人々が曖昧で一般的な性格記述や情報を、自分自身に特別に当てはまると感じる心理学的な現象を指します。この効果は、個人が自分に関する情報を非常に個別化されていると感じているが故に引き起こされる現象です。
バーナム効果は、占いや占星術、オンラインの性格テスト、自己啓発書などの分野で顕著に現れます。これらの分野では、一般的で曖昧な記述が個々の読者に当てはまるかのように見えるため、信憑性が高まることがあります。
名前の由来
バーナム効果は、1956年にアメリカの心理学者ポール・ミールが、興行師フィニアス・テイラー・バーナムの名前にちなんで名付けたそうです。
バーナムの「We’ve got something for everyone(誰にでも当てはまる要点というものがある)」というセリフがバーナム効果の由来となっているようです。
ちなみに、バーナム効果は、それを実験により証明した心理学者バートラム・フォアラーの名前から”フォアラー効果”とも言われています。
バーナム効果の具体例
では、いくつか具体例を見ていきましょう。
- 占いや占星術
- オンライン性格テスト
- 自己啓発書やセミナー
事例1: 占いや占星術
新聞や雑誌、ウェブサイトに掲載されている占いや占星術は、バーナム効果の典型的な例です。これらの占いは、非常に一般的で曖昧な記述を使って、多くの人が自分に当てはまると感じるように作られています。たとえば、「今日は友達との出会いが楽しいものになりそうです」や「あなたは感受性が強く、人間関係に繊細です」のような記述は、ほとんどの人が自分に関連すると感じることができます。
事例2: オンラインの性格テスト
インターネット上でアクセスできる性格テストも、バーナム効果の例です。これらのテストは、一般的で曖昧な結果を提供することがよくあり、多くの人がその結果を自分に当てはまると感じます。たとえば、「あなたは冒険心があり、新しい経験を楽しむことが好きですが、安定も重視します」といった結果は、多くの人が共感できる内容です。
事例3:自己啓発書やセミナー
自己啓発書やセミナーも、バーナム効果を利用していることがあります。これらのメディアは、一般的で曖昧なアドバイスや指針を提供し、多くの人がそれを自分の状況に適用できると感じることができます。例えば、「成功するためには、自分の夢に向かって情熱を持って取り組むことが大切です」や「周りの人と良好な関係を築くことで、人生がより充実します」といったアドバイスは、個々の状況に関係なく共感を呼びやすいです。
バーナム効果の実験
ここでは、心理学者バートラム・フォアラーによる実験を紹介します。
まず、被験者の学生たちに性格診断テストを受けてもらいます。そして、一週間後、学生一人ひとりにテスト結果を手渡します。
ところで、ここで1つギミックが用意されています。それは、学生たちに手渡したテスト結果は、すべて同じ結果というもの。もちろん、学生たちは、テスト結果について、一人ひとり違うものだと思っています。
最後に、学生たちに、そのテストの結果がどれくらい自分に当てはまっていたか、を5段階で評価してもらいました。
結果、学生たちの平均は「4.26」という結果となりました。テスト結果は全員一緒であったにも関わらず、学生のほとんどはそれを「自分に当てはまっている!」と感じたわけですね。ちなみに、テスト結果は、フォアラーが新聞に出ていた「星占い」から適当に抜粋したものでした。
星占いから抜粋した占い結果を下記に抜粋しておきますね。
不思議現象 なぜ信じるのか: こころの科学入門
バーナム効果と好意の関係
好意は他人に対して抱く肯定的な感情や評価のことです。これらの関係は、脳内の報酬系が関与しています。
報酬系は、快感や喜びを感じる部分で、ドーパミンという神経伝達物質が主に関与しています。バーナム効果が働くと、自分に関する肯定的な情報を受け取ったと感じることで、報酬系が活性化されます。この活性化によって好意が生まれ、他人に対する肯定的な感情が引き起こされることがあります。
事例: マッチングアプリのプロフィール
マッチングアプリのプロフィールにおいて、曖昧で一般的な表現を使うことで、バーナム効果が働くことがあります。
例えば、「冒険好きで新しいことに挑戦するのが好き」という表現は、多くの人に当てはまる可能性があります。これを読んだユーザーは、相手が自分と共通点があると感じることがあり、報酬系が活性化されます。その結果、相手に対する好意が生まれる可能性が高まります。
このように、バーナム効果と好意の関係は、脳科学的な視点から報酬系の活性化によって説明されます。自分に関する肯定的な情報を感じることで、報酬系が刺激され、他人に対する好意が生まれることがあるのです。
バーナム効果を使う上で大切な4つのポイント
- 個人に向けられた言葉である
- 評価者に権威性がある
- ポジティブな内容である
- 抽象的な表現である
条件1:個人に向けられたものである
特定の個人に向けられたものでなければなりません。思い出してもらいたいのですが、フォアラーの実験でも、テストを一人ひとりに渡していましたよね。
これは「この性格診断テストの結果は、あなた自身に向けられたものですよ〜」と被験者に思わせるためのひと工夫だったわけです。
占いでも、生年月日をそれぞれ足し算させて、下一桁の数字から将来を占うなんてことをしますが、これも個人に向けられたものに見せるための策略となります。
条件2:評価者に権威性がある
評価者(占い師など)に、権威性(専門性)がなければなりません。
フォアラーの実験でもそうでしたが、フォアラーは「心理学者」であり「大学教授」だという権威性を持っていました。つまり、信頼性が高かったわけです。
もしも、これが「学生の考えた性格診断テスト」だったとしたら、信頼性が低すぎるため、バーナム効果の影響は激減していたでしょう。
「占い師」って怪しかったり、奇抜な格好をしている人たちが多いイメージありませんか。これは、見た目によって権威性を獲得するため、あえてやっていることがほとんどです。
条件3:ポジティブな内容である
評価の内容はポジティブなものにしましょう。なぜなら、ネガティブなことから目を背けようとする性質があるからです。
評価の内容をネガティブな内容にしてしまったら、「いや、そんなはずがない!」といった反発が起きてしまい、バーナム効果の影響が激減してしまいます。
だから、占い師の多くはそこまでキツイことを言ったりはしません。どちらかというと、お客様を「ぬるま湯」に浸からせるようなことばかりを伝える傾向があります。仮に、キツイことを伝えたとしても、後でポジティブなことを伝えることがほとんどです。
条件4:抽象的な表現である
抽象的な表現をすることで、あたかも自分だけに当てはまっていると思わせることができます。
たとえば、「あなたはクールな一面もありますが、『人に好かれたい!』という一面もありますね?」と言われたらどうでしょうか。当てはまっていると回答した人の方が多いのではないでしょうか。
HARMの法則
- Health=健康
- Ambition=目標
- Relation=人間関係
- Money=お金
HARMの法則は、人間が持つ普遍的な悩みを4つにまとめた概念です。加えてお伝えすると、アドラー心理学では全ての悩みは人間関係の悩みであるとしています。
たとえば、職場、友人、恋愛などで何かしらの悩みを抱えていることが多々あります。なので、占い師の会話の入り口は、この4つのどれかに絞られていることがほとんど。
バーナム効果を営業に活用する方法
ここでは、バーナム効果を営業に活用する方法について解説していきます。
- 顧客のニーズに共感する表現を用いる
- 一般的な悩みや課題に対処する製品を提案する
- 顧客の価値観に合わせた製品を提案する
方法1:顧客のニーズに共感する表現を用いる
事例: 住宅営業
住宅営業担当者は、バーナム効果を利用して顧客のニーズに共感することができます。例えば、「最近は、節約志向の方が増えていて、エコな住宅が注目されています」といった一般的な記述を用いることで、顧客が自分の状況に当てはまると感じる可能性が高まります。その後、顧客の具体的な要望に応じて適切な住宅プランを提案することが重要です。
方法2:一般的な悩みや課題に対処する製品を提案する
事例: ITソリューション営業
ITソリューション営業担当者は、バーナム効果を活用して顧客の課題や悩みに共感し、適切な製品やサービスを提案することができます。例えば、「多くの企業が業務効率化やコスト削減を目指しています」といった一般的な表現を用いることで、顧客が自分の状況に適用できると感じるようにします。そして、顧客の業種や規模に応じたITソリューションを提案することが大切です。
方法3:顧客の価値観に合わせた製品を提案する
事例: 保険営業
保険営業担当者は、バーナム効果を活用して顧客の価値観に共感し、適切な保険プランを提案することができます。例えば、「多くのお客様が、家族の将来の安心を重視しています」といった一般的な表現を用いることで、顧客が自分の状況に適用できると感じるようにします。その後、顧客のライフステージやリスク許容度に応じた保険プランを提案することが重要です。
バーナム効果をマーケティングに活用する方法
ここでは、バーナム効果をマーケティングに活用する方法について解説していきます。
- 広告コピーに一般的な悩みやニーズを盛り込む
- ターゲットに合わせた一般的な価値観を反映する
- テストやクイズを活用したマーケティング
方法1:広告コピーに一般的な悩みやニーズを盛り込む
事例: コスメ広告
化粧品会社がスキンケア製品の広告を作成する際、一般的な悩み(乾燥肌、毛穴の開きなど)を取り上げることで、バーナム効果を活用できます。広告に記載された悩みに共感できる消費者は、製品を試してみたいと思うようになります。これにより、消費者に製品をアピールする効果が期待できます。
方法2:ターゲットに合わせた一般的な価値観を反映する
事例: 自動車広告
自動車メーカーが家族向けの車をマーケティングする際、一般的な価値観(安全性、広いスペース、使い勝手の良さ)やライフスタイル(週末の家族旅行など)を反映させることで、バーナム効果を活用できます。ターゲット層が広告に描かれた価値観やライフスタイルに共感し、自分たちにも当てはまると感じることで、車への興味や購買意欲が高まります。
方法3:テストやクイズを活用したマーケティング
事例: ファッションブランドのスタイル診断
ファッションブランドが、オンライン上で提供するスタイル診断テストを活用して、バーナム効果をマーケティングに取り入れることができます。診断結果が曖昧で一般的なものである場合、多くの人が自分に適用できると感じます。その後、診断結果に基づいた商品を提案することで、消費者が興味を持ち、購入につながる可能性が高まります。
まとめ
バーナム効果とは|心理的構造と営業、マーケティングに活用する方法を徹底解説
バーナム効果は難しいテクニックではありますが、相手から信頼を得る上で非常に効果の高いテクニックです。
営業やマーケティングで使える事例を複数用意いたしましたので、あなたの販売戦略に活かせるものは積極的に使っていくようにしましょう。
バーナム効果とは|心理的構造と営業、マーケティングに活用する方法を徹底解説