ドア・インザ・フェイスとは、最初に大きな要求をすることで、本命の要求を通しやすくするという心理テクニックです。
簡単に言えば、最初に大きなお願いをして、後から小さなお願いをすれば、その小さな要求が通りやすくなるということです。
本記事では、ドアインザフェイスの仕組みや、営業やマーケティングに活用する方法について解説していこうと思います。
というわけで本日は、
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
ドア・インザ・フェイスとは
最初に大きな要求をすることで、本命の要求を通しやすくするという心理テクニック
例えば、寄付を募るために、まず寄付金額の大きな要求を提示し、相手が拒否すると、より小さい金額を要求します。このようにすることで、寄付を得ることができる可能性が高まります。
また別の例として、スポーツジムの会員募集において、最初に高額な年会費の支払いを求めることで、多くの人が断る可能性があります。しかし、その後、より小額の月会費を提示することで、会員数を増やすことができます。
このように、最初に本命の要求をするよりも、最初に小さな要求をしてからの方が承諾率を高めることができます。
ドアインザフェイスの具体例
ではここからは、ドアインザフェイスの日常的な事例をいくつか紹介します。
- 子供のお願い
- 交渉
- 友人からのお願い
事例1:子供のお願い
子供が親に何かをお願いする際、まず大きな要求(例えば、高価なゲーム機やおもちゃ)をして断られた後、もっと小さな要求(例えば、安価なお菓子や玩具)をすることで、親がその要求に応じる確率が高まります。
事例2:交渉
仕事で昇給や昇格を求める際、最初に非常に高い給与や大きな昇格を要求し、断られた後に、もっと現実的な給与アップや小さな昇格を要求することで、交渉相手がその要求に応じる確率が高まります。
事例3:友人からのお願い
友人があなたに何かを手伝ってほしいとき、最初に時間がかかる大変なお願いをして断られた後、もっと手間のかからない小さなお願いをすることで、あなたがそのお願いに応じる確率が高まります。
ドア・インザ・フェイスの実験
ここでは、1975年に社会心理学者 ロバート・チャルディーニが行った実験を一緒に見ていきましょう。
まず初めに、被験者の大学生に対して、「(1)非行少年を2時間ほど動物園に連れて行く、ボランティアをやってもらえませんか?」というお願いをしました。この場合の学生たちの承諾率は17%という結果となりました。
しかし、先ほどのお願いをする前に、「(2)2年間、毎週2回にわたり、非行少年たちのカウンセラーをしてもらえませんか?」という大きめのお願いを断らせた場合、(1)の承諾率は51%という結果となったのです。
このように、先に大きなお願いをしてから、本命の要求をした方が、承諾率は高まるということが分かりますね。
ドアインザフェイスはなぜ発動するのか
ドアインザフェイスが発動する理由は、人間の本能的な反応にも関係しています。
人間は、先天的に他者との関係性を築くために、相手の意見や気持ちを理解しようとする傾向があります。そのため、相手が最初の要求を拒否した場合、自分自身が相手の要求に応えられなかったことで、相手との関係性が悪化することを避けるため、相手の要求を受け入れる可能性が高くなります。
この部分をもう少し詳しく説明すると、ドアインザフェイスには譲歩の返報性が働いていると言えます。譲歩の返報性とは、「譲ってもらったら、譲り返さないといけない」と感じる心理傾向のことです。
たとえば、お願いをした側は、お願いを拒否した側に対して、「うん、そこ(大きな要求)は譲るよ〜」という形で譲歩をしました。なので、お願いをされた側は無意識に「私も譲歩しないと…」という気持ちが生まれるため、次に行う要求が通りやすくなるのです。
以上のように、ドアインザフェイスが発動する理由は、人間の本能的な反応にも関係しています。相手との関係性を悪化させたくないという本能的な傾向や、譲歩の返報性のため、要求を受け入れる可能性が高まるのです。
フットインザドアとの違い
小さな承諾を積み重ねることで、本命の要求を承諾させやすくするテクニック
ドアインザフェイスを勉強すると、よく登場するのがフットインザドアです。それぞれの違いを簡単に説明すると、下記のような感じになります。
それぞれ、本命の要求を通すというところは一緒ですが、そのアプローチ方法が違います。たとえば、”10万円を貸してもらう”という目的を達成するという例を一緒に見ていきましょう。
以上のことからも分かる通り、フットインザドアとドアインザフェイスでは、要求する大きさの順番が逆になっています。もちろん、どちらも効果が高いテクニックなので、臨機応変に使っていくようにしましょう。
ドアインザフェイスの5つのポイント
ここでは、ドアインザフェイスを行う際に押さえておくべき5つのポイントを紹介していきます。
- 大きな要求と小さな要求を事前に計画する
- 最初の要求は大きくし過ぎない
- 時間を空けずに要求する
- 数字を使う
- 何度も使わない
ポイント1:大きな要求と小さな要求を事前に計画する
ドアインザフェイス手法は、最初に大きな要求を提示し、その後小さな要求を提示することで、相手の拒否反応を減らし、購買意欲を高めるための手法です。しかし、大きな要求や小さな要求をいい加減に提示すると、逆効果になることもあります。そのため、事前に大きな要求と小さな要求を計画し、効果的に提示することが重要です。
ポイント2:最初の要求は大きくし過ぎない
最初の要求を大きくし過ぎてしまうと、嫌悪感を持たれてしまうため、次にする小さな要求も通らなくなります。たとえば、5万円を貸してもらうのに、最初に「100万円貸して」なんて要求をすれば、人間性を疑われてしまい、ほぼ100%と言って良いほど、小さな要求が通らなくなってしまいます。
ポイント3:時間を空けずに要求する
大きな要求をした後、なるべく早く小さな要求を行うようにしましょう。なぜなら、相手が罪悪感を感じているのは、今その瞬間だからです。罪悪感は、時間が経てば経つほど薄れていってしまいます。
どんな感情もそうですが、それは時間が経てば、逓減(徐々に減っていくこと)していきます。ポイント1でも解説しましたが、要求はあらかじめ設計しておけば、すぐに次の要求を行えるので、やはり事前に設計することが重要ということが改めて分かりますね。
ポイント4:数字を使う
ドアインザフェイスを使う際は、なるべく数字を用いることをお勧めします。というのも、数字によって、要求同士の差が明らかになり、それによって要求が通りやすくなるからです。
たとえば、「5万円かしてくれない?」と要求をしてから、「1万円かしてくれない?」と伝えると、「1万円だったら…」と感じさせやすくなります。これにはアンカリング効果が大きく影響しているのですが、もし詳細を知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
ポイント5:何度も使わない
ドアインザフェイスは、繰り返し使うと、相手から嫌われてしまう可能性が出てきます。なぜなら、このテクニックは、少なからずネガティブな要素が含まれているからです。たとえば、会うたびに繰り返し、無理な要求をしてくる人のことを良く思うでしょうか。きっと、会いたくないと思いますよね。
ドアインザフェイスを営業に活用する方法
では、ここからはドアインザフェイスを営業に活用する方法について解説していきます。
- 商品のアップセル
- 契約期間の延長
- 追加オプションの提案
- ボリュームディスカウント
方法1:商品のアップセル
事例:あなたは家電量販店の営業マンで、高性能な掃除機を売りたいと考えています。
- 最初の要求:最先端の機能を備えた高価な掃除機(例:20万円)を提案します。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客はこの高価な掃除機を拒否します。
- 2つ目の要求:次に、機能はやや劣るものの、価格が手頃な掃除機(例:8万円)を提案します。顧客は最初の要求に比べて適切な価格だと感じ、購入しやすくなります。
方法2:契約期間の延長
事例:あなたはジムの営業マンで、顧客に長期の会員契約を結ばせたいと考えています。
- 最初の要求:2年間の会員契約(例:月額1万円)を提案します。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客は長期の契約を拒否します。
- 2つ目の要求:次に、1年間の会員契約(例:月額1.2万円)を提案します。顧客は最初の要求に比べて適切な期間だと感じ、契約しやすくなります。
方法3:追加オプションの提案
事例:あなたは自動車ディーラーの営業マンで、顧客に車の追加オプションを購入させたいと考えています。
- 最初の要求:高額な追加オプションパッケージ(例:50万円)を提案します。このパッケージにはナビゲーションシステムや革シートなどが含まれます。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客はこの高額な追加オプションを拒否します。
- 2つ目の要求:次に、価格が手頃で必要なオプションだけを含むパッケージ(例:20万円)を提案します。顧客は最初の要求に比べて適切な価格だと感じ、購入しやすくなります。
方法4:ボリュームディスカウントの活用
事例:あなたは卸売業者の営業マンで、顧客に大量の商品を購入させたいと考えています。
- 最初の要求:非常に大量の商品をまとめて購入するディスカウントプラン(例:200個まとめ買いで1個あたり500円)を提案します。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客はこの大量の商品を一度に購入することを拒否します。
- 2つ目の要求:次に、顧客が必要とするだけの商品をまとめて購入するディスカウントプラン(例:50個まとめ買いで1個あたり600円)を提案します。顧客は最初の要求に比べて適切な量だと感じ、購入しやすくなります。
ドア・インザ・フェイスをマーケティングに活用する方法
では、ここからはドアインザフェイスをマーケティングに活用する方法について解説していきます。
- 割引クーポンの活用
- 限定版商品の提案
- プレミア会員の勧誘
方法1:割引クーポンの活用
事例:あなたはファッションブランドのマーケティング担当者で、消費者に購入意欲を高めたいと考えています。
- 最初の要求:顧客に対し、50%割引クーポンをメールやSNSで告知しますが、使用条件を購入金額が5万円以上の場合に限定します。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客はこの条件を満たすことが難しいと感じ、クーポンを使用しないでしょう。
- 2つ目の要求:数日後、顧客に対し、20%割引クーポンを告知し、使用条件を購入金額が1万円以上の場合に限定します。顧客は最初の要求に比べて適切な割引率と条件だと感じ、購入しやすくなります。
方法2:限定版商品の提案
事例:あなたは高級化粧品ブランドのマーケティング担当者で、新製品の販売を促進したいと考えています。
- 最初の要求:限定版の高価な新製品セット(例:5万円)を告知し、顧客に提案します。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客はこの高価な限定版セットを購入しないでしょう。
- 2つ目の要求:その後、通常版の新製品セット(例:2万円)を告知し、顧客に提案します。顧客は最初の要求に比べて適切な価格だと感じ、購入しやすくなります。
方法3:プレミアム会員の勧誘
事例:あなたはオンラインショッピングサイトのマーケティング担当者で、プレミアム会員を増やしたいと考えています。
- 最初の要求:プレミアム会員の年間費用を高額に設定し(例:2万円/年)、さまざまな特典をアピールして告知します。
- 顧客の反応:多くの場合、顧客はこの高額なプレミアム会員に加入しないでしょう。
- 2つ目の要求:その後、期間限定の割引キャンペーンを実施し、プレミアム会員の年間費用を下げます(例:1万円/年)。また、キャンペーン期間中に加入することで特別なギフトも提供すると告知します。顧客は最初の要求に比べて適切な価格だと感じ、プレミアム会員への加入を検討しやすくなります。
まとめ
ドア・インザ・フェイス|承諾率が3倍になる最強の交渉術
ドア・インザ・フェイスは、承諾率を高める上で非常に効果的なテクニックです。
ただし、使う際は、しっかりポイントを押さえて使うようにしましょう。間違った使い方をしてしまうと、他者から嫌われてしまうだけです。
ドア・インザ・フェイス|承諾率が3倍になる最強の交渉術