フット・インザ・ドアとは、小さな承諾を積み重ねることで、本命の要求を承諾させやすくする心理テクニックです。
たとえば、男性から最終的に高価な貢物をさせたいのであれば、最初はあえて小さな貢物から買ってもらうことで、その承諾率を高めることができます。
たとえば、「食事代 → 映画 → ディナー → 高級バック」という具合に。このように、”小さな承諾”も最終的には”大きな承諾”へと変貌を遂げるのです。
本記事では、その心理的構造や営業やマーケティングに活用する方法について解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
というわけで本日は、
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
フット・インザ・ドアとは
小さな承諾を積み重ねることで、本命の要求を承諾させやすくするテクニック
例えば、ある慈善団体が募金を呼びかける場合、最初に小額の募金を求めることで、寄付金額を徐々に増やすことができます。
また、営業マンが商品を売り込む場合も、最初に小さな購入をお願いすることで、その後の大きな購入につなげることができます。
このように、小さなお願い事をすることで、それは最終的に大きなお願いを通すことにつながります。
フットインザドアの具体例
ではここからは、フットインザドアの日常的な事例をいくつか紹介します。
- 子供のお願い
- 募金活動
- 調査やアンケート
事例1:子供のお願い
子供が親に何かをお願いする際、まず小さな要求(例えば、家の近くの公園で遊ぶこと)をして承諾された後、もっと大きな要求(例えば、遠くのテーマパークへ行くこと)をすることで、親がその要求に応じる確率が高まります。
事例2:募金活動
チャリティーや非営利団体が募金活動を行う際、最初に低額な寄付を要求し、寄付してもらった後に、より高額な寄付や定期的な寄付を提案することで、寄付者がその要求に応じる確率が高まります。
事例3:調査やアンケート
研究者やマーケターが調査やアンケートを実施する際、最初に短いアンケートに回答してもらった後に、より長いアンケートや詳細なインタビューを要求することで、参加者がその要求に応じる確率を高めることができます。
フット・インザ・ドアの実験
1966年に、社会心理学者ジョナサン・フリードマンとスコット・フレイザーがある面白い実験をしました。
まず、カリフォルニア州の住民を対象に研究員が「⑴安全運転と書かれた看板を庭に立てさせてもらえませんか?」のお願いをしました。この時の承諾率は17%という結果となりました。ちなみに、この看板は庭の景観が損なわれるくらい大きな看板です。
しかし、この要求の2週間前に「⑵安全運転と書かれた小さなステッカーを車の窓ガラスに貼らせてもらえませんか?」という要求をした結果、(1)の承諾率がなんと4倍以上に跳ね上がったのです。具体的には、承諾率76%まで跳ね上がりました。
ここまででも、フットインザドアの凄さに気づいたかとは思いますが、実験はまだ続きます。次に、⑴の要求の2週間前に⑴とは無関係の下記の要求をしました。
「⑶カリフォルニアを美しくという嘆願書に署名をいただけますか?」
そして、⑴のお願いをしたところ、その承諾率は46%まで上昇したのです。
面白いことに⑴のお願いの内容と⑶のお願いの内容に関係性が無くても、その承諾率は上がるということが分かりました。つまり、「前の要求」と「次の要求」に関連性がある方が承諾率は上がりますが、もしも関係性がなかったとしても承諾率が高まるということですね。
フット・インザ・ドアはなぜ発動するのか
結論から言えば、フットインザドアには、コミットメントと一貫性の原理が大きく関与しています。コミットと一貫性の原理とは、約束をしたら、貫き通したいと感じる心理傾向のことです。
たとえば、「今月は売上100万円を達成します!」と公の場で約束してしまうと(コミットメント)、「達成できなかったらどうしよう…」と感じてしまったり、達成できなかった時「うわ、大口叩いたのに恥ずかしい」など、様々な感情が出てくるでしょう。
これをフットインザドアと絡めて話をすると、最初に”小さな要望に応える”というコミットメントをすることで、その後も”大きな要求に応える”という一貫性が働くわけです。なので、フットインザドアが成立するのです。
ドアインザフェイスとの違い
最初に大きな要求をすることで、本命の要求を通しやすくするという心理テクニック
フットインザドアを勉強すると、よく登場するのがドアインザフェイスです。それぞれの違いを簡単に説明すると、下記のような感じになります。
それぞれ、本命の要求を通すというところは一緒ですが、そのアプローチ方法が違います。たとえば、”10万円を貸してもらう”という目的を達成するという例を一緒に見ていきましょう。
以上のことからも分かる通り、フットインザドアとドアインザフェイスでは、要求する大きさの順番が逆になっています。もちろん、どちらも効果が高いテクニックなので、臨機応変に使っていくようにしましょう。
フット・インザ・ドアを攻略する4つのポイント
ここでは、フットインザドアを使う上でのポイントを4つ紹介していきます。
- 事前に設計しておく
- 小さなリクエストを適切に選ぶ
- 自然なつながりを持たせる
- 適切なタイミングを見極める
ポイント1:事前に設計しておく
小さなリクエストは、あらかじめ設計しておくことが望ましいです。
特に、営業の現場であれば、「無料のお試し」から提案してから「バックエンド商品」を紹介するという具合に、事前に計画できることもあります。まずは、あなたの本命のリクエストを明確にし、そこから逆算して、小さなリクエストを設計するようにしましょう。
ポイント2:小さなリクエストを適切に選ぶ
最初の小さなリクエストは、相手が簡単に応じられるものであることが重要です。
相手に負担をかけず、無理なく受け入れられる範囲でリクエストを選びましょう。これによって、相手は快く協力してくれることが期待できます。このように、小さなリクエストから徐々に大きなリクエストにしていくことをスモールステップと言います。
ポイント3:自然なつながりを持たせる
小さなリクエストから大きなリクエストへの移行が自然であることが重要です。両者の関連性が高いほど、相手は次のリクエストにも応じやすくなります。関連性が低いと、フットインザドア効果が弱まる可能性があります。これは前述した実験内容からも分かりますね。
ポイント4:適切なタイミングを見極める
小さなリクエストから大きなリクエストへ移行するタイミングを適切に見極めることも重要です。
小さなリクエストに応じた直後に大きなリクエストをすると、相手が圧迫感を感じることがあります。一方で、あまり時間が経過しすぎると、フットインザドア効果が弱まることがあります。適切なタイミングを見極めることが大切です。
フット・インザ・ドアを営業に活用する方法
ここからは、フットインザドアを営業に活用する方法を3つ紹介していきます。
- 無料サンプルや体験版の提供
- 小さな依頼から始める
- 段階的な販売戦略
方法1: 無料サンプルや体験版の提供
例: ソフトウェア会社が、製品の無料体験版を提供してから、フルバージョンの購入を促します。 最初に無料サンプルや体験版を提供することで、顧客はその製品やサービスを試す機会を得ます。顧客が満足すれば、その後のフルバージョンやアップグレードの購入に応じやすくなります。
方法2: 小さな依頼から始める
例: 広告会社が、まずは小さなプロジェクト(ロゴ制作など)から始めて、その後大きなプロジェクト(広告キャンペーンなど)につなげます。 最初に小さな依頼を受け入れてもらうことで、顧客との信頼関係が築かれます。その後、大きなプロジェクトについて提案する際に、顧客がより協力的になります。
方法3: 段階的な販売戦略
例: 自動車販売店が、まずは安価な車の試乗を提案し、その後高価な車の購入を促します。 最初に安価な車の試乗を提案することで、顧客はそのブランドや製品に触れることができます。顧客が満足すれば、その後の高価な車の購入に応じやすくなります。
フットインザドアをマーケティングに活用する方法
ここでは、フットインザドアをマーケティングに活用する方法を3つ紹介していきますね。
- メールマーケティング
- ソーシャルメディア
- 顧客レビューやフィードバックの収集
方法1: メールマーケティング
まず、ニュースレターやクーポンの登録を促し、その後、特別なプロモーションや割引で購入を促す。 最初に顧客にニュースレターやクーポンの登録を促すことで、顧客はそのブランドと関わりを持ちます。その後、特別なプロモーションや割引を通じて、顧客が購入に進む可能性が高まります。
方法2: SNS
まず、フォローやいいねを促し、その後、キャンペーンなどへの参加を促します。 これはTwitterでよく見かける戦略ですね。たとえば、「Twitterで毎月100万円を稼げるロードマップを無料で配ります!欲しい方は、”いいね”と”リツイート”をお願いします!」という感じですね。この戦略は、返報性の原理も同時に活用することができるので、ぜひ効果的に使うようにしましょう。
方法3: 顧客レビューやフィードバックの収集
まず、顧客に製品やサービスに関する簡単なフィードバックを求め、その後、詳細なレビューや紹介をお願いします。 最初に簡単なフィードバックを求めることで、顧客はそのブランドや製品について考えます。その後、詳細なレビューや紹介をお願いすることで、顧客はより深い関与を行い、ブランドへのロイヤリティが高まる可能性があります。
まとめ
フット・インザ・ドア|相手を洗脳状態にする交渉術
フットインザドアが、ものすごく強力な心理テクニックということは理解してもらえたでしょうか。
もしかすると、最初は、このテクニックを使うのに、苦戦を強いられるかと思います。しかし、何度も使っていくうちに、慣れてきて、自然と頭の中で設計できるようになります。
ぜひ、何度も繰り返し使って、フットインザドアをマスターするようにしましょう。
フット・インザ・ドア|相手を洗脳状態にする交渉術