サンクコスト効果(埋没費用)とは、特定の対象にコスト(時間・お金・労力など)をかけると、それを不当に価値付けしてしまうという心理現象のことです。
たとえば、パチンコで1万円負けてしまったとする。
しかし、多くの人たちはその損を取り返そうと、さらにお金を注ぎ込んでしまいます。
そして、結果大負けしてしまう。。。
これはサンクコスト効果が大きく影響しています。
しかし、なぜこのような現象が起きてしまうのでしょうか?…
というわけで本日は、
- サンクコスト効果とは
- サンクコスト効果の具体例
- サンクコスト効果を営業に活用する方法
- サンクコスト効果をマーケティングに活用する方法
についてブログを執筆していこうと思います。
目次
サンクコスト効果とは
特定の対象にコスト(時間・お金・労力など)をかけると、それを不当に価値付けしてしまうという心理現象
サンクコストとは、「サンク:Sunk」(沈んでしまった)「コスト:cost」(費用)のことで、もう戻ってこない費用のことをさします。
このサンクコストが増えると、「もったいない…」「損をしたくない…」という欲求が発動し、さらにコストを投下しようとするのです。
“コンコルド効果”とは
サンクコスト効果は、別名「コンコルド効果」とも呼ばれています。
コンコルド効果の名前の由来は、フランスとイギリスが共同開発した超音速旅客機のコンコルド機から来ています。
コンコルドは、開発中から開発が終わっても採算が取れないと分かっていたのにも関わらず、
それまでに投資してきた金額が膨大だったため、そのまま開発が継続され、商用化後さらに赤字を膨らませる結果となりました。
※ちなみに、コンコルド機は2000年の7月にパリで100名を超える犠牲者を出したことから、2003年コンコルドグループという巨大組織は崩壊しました
サンクコスト効果の例
では、いくつか例を見ていきましょう。
- 購入してしまった本
- 株式投資
- 男女の恋愛感
例1:購入してしまった本
たとえば、表紙だけを見て、ある小説を購入したとする。
そして、帰宅しその小説を40ページ読んだのですが、めちゃめちゃつまらないものでした。
しかし、その小説に対してお金・時間(コスト)をかけてしまったため、「最後まで読まないともったいない!」という判断をしてしまうのです。
例2:株式投資
たとえば、たくさんの時間と労力(コスト)を使って、ある会社の株を購入したとする。
しかし、それも虚しく株価は下落していきます。
本来は、ある程度まで下落したら、損切りをするという選択が正しいのですが、
その株を購入するまでにかなりの時間と労力を投下したため、「きっと上がるに違いない!」という欲求が発動します。
その結果、株価はドンドン下落し、大損をこいてしまうのです。
例3:男女の恋愛感
恋愛ではよく「男性=別フォルダを作る」「女性=上書き保存」なんていいますよね?
(※「男性は女性を引きずる」「女性は男性にさっぱりしている」という意味ですね)
これを男女の脳で説明する人がいるのですが、実はこれにもサンクコスト効果が大きく影響しています。
というのも、男性は女性に対して様々な貢物(コスト)をするからです。
たとえば、ご飯を奢ったり(お金)、高級なバックを買ってあげたり(お金)、デートの下調べをしたり(労力)などですね。
つまり、男性は女性にそれだけのコストをかけてきたから、ふられた時に引きずったりするのです。
でも、女性はコストをかけられている側だから、別になんとも思わないんですよね。
サンクコスト効果の実験
では、ここで1つサンクコストに関する有名な思考実験をご紹介します。
熱心なスポーツファンAとBが、70キロほど離れた町で開催されるバスケットボールの試合を観戦する計画を立てていました。
しかし、AさんとBさんは、それぞれチケットの入手方法が下記のように違います。
- Aはすでに前売り券を買っています
- Bはチケットを買いに行く途中で運よく友達に会い、ただで一枚譲ってもらいました
しかし、当日の夜は吹雪になるとの予報が出ています。
さて、吹雪をおしても観戦に行こうとするのは、AとBのどちらでしょうか?
明らかに、Aですよね?
なぜなら、Aは「自分のお金でチケットを購入する」というコストを支払っているからです。
(※ちなみに、実際の実験でもAと選択する被験者が多数派でした)
一方、Bはどうかというと、チケットを手にいれるためのコストを支払っていません。
だから、吹雪となったら「まぁ貰い物だし〜」と家でゆっくり過ごすことを選択する可能性が高いわけです。
コストの有無によって、決断に大きな差が生まれるということが分かりますね。
サンクコスト効果はなぜ発動するのか
でも、なぜこのような現象が起きてしまうの??
- コミットメントと一貫性の原理
- ザイアンス効果
- 認知的不協和
心理学1:コミットメントと一貫性の原理
約束を貫き通そうとする心理現象
例:ホスト
たとえば、ホストに「貢ぐ」という行動をしてしまった女性は、その行動と矛盾しない態度・行動をずっと取り続けようとします。
結果、“ホス狂い”のような状態になってしまうわけです。
(※“ホス狂い”とは「ホストに狂ってしまう」という意味の造語です)
心理学2:ザイアンス効果(単純接触効果)
特定の対象との接触回数が増えるほど、その対象への好意レベルが上がるという心理効果
(※この現象はモノでも同じよに起こります)
例:恋愛
もしも、異性から好かれたいのであれば、「接触時間」を気にするのではなく、「接触回数」を気にするようにしましょう。
たとえば、1回5時間のデートをするよりも、1時間のデートを5回に分けた方が、異性からの印象はよくなるということが分かっています。
つまり、接触回数が増えることで、その対象への愛着がわくわけですね。
心理学3:認知的不協和
矛盾する2つの認知を同時に抱えていて、不快な状態
例:酸っぱい葡萄
イソップ童話の中で“酸っぱいぶどう”という話が分かりやすいですね。
キツネは、高い木にぶら下がっているぶどうを一生懸命取ろうとするのですが、結局手に入れることはできませんでした。
そこでキツネはこんな言い訳をするのです。「あのぶどうは酸っぱいに違いない!」と。
認知的不協和の解消
では、キツネはなぜこのような言い訳をしたのでしょうか?
結論、不快な状態を解消しようとたからです。
(※これを認知的不協和の解消といいます)
2つの認知
ぶどうを手に入れることができなかったキツネは、自分の中である矛盾を抱えることになりました。
- ぶどうが食べたい
- でも手に入らない
脳はこれらの矛盾を抱え続けていると、不快な状態となってしまうため(認知的不協和)、
キツネの脳は無意識に「ぶどうが食べたい」という思考を否定したのです。
つまり、「あのぶどうは酸っぱいに違いない!」という形で正当化したわけです。
サンクコスト効果に支配されないようにするためには
ここまででサンクコスト効果が、ある意味心理的欠陥のひとつだということは理解していただけましたでしょうか?
というわけで、ここからはサンクコスト効果から脱却し、冷静な判断が下せるようになる方法を3つ解説します。
- ボーダーラインを決める
- メタ認知
- 失敗だと認める
方法1:ボーダーラインを決める
たとえば、パチンコをしようと思った時、「1万円がなくなったら終わりにする!」「5,000円買ったら終わりにする!」などのボーダーを決めるのです。
すると、それを超えた取引をしにくくなります。
しかし、後からボーダーラインを変更してしまうこともあるでしょう。
たとえば、「やっぱりもう1万円入れちゃうか?」みたいな感じで。
解決策:意志力(ウィルパワー)を鍛える
自己コントロールに必要な力のこと
自分との約束をなかなか守ることができないという方は、「意志力(ウィルパワー)」を鍛えましょう。
もしも、「意志力について詳しく知りたい」「意志力を高めたい」という方は、『意志力(ウィルパワー)とは|自制心が高まれば人生が変わる!』を参考にしてください。
方法2:メタ認知
自分を客観的に見つめること
メタ認知力を鍛えることで、サンクコスト効果のみならず、あらゆる認知バイアスから逃れることができるようになります。
理解→客観視→脱却!
では、どうすればメタ認知することができるのでしょうか?
結論、サンクコスト効果についての理解を深めましょう。
つまり、その瞬間にあなたが「サンクコスト効果の罠に陥っている!」ということを認知できればいいのです。
サンクコスト効果に翻弄されてしまう人たちの多くは、その言葉自体を知りません。
だから、気づかないうちに、コストを投下し続けてしまうという結果となってしまいますが、
このように、サンクコスト効果という言葉を知り、理解し、それに気づけるようになれば、それ以上に無駄なコストを投下しなくなります。
方法3:失敗だと認める
コンコルド事件は、失敗を認めることができなかったがゆえに起きた事件と言っても過言ではありません。
開発途中で「これは採算が合わなくなりそうだから、途中でやめておこう!」と誰かが言い出していれば、損失は大きくなることがなかったわけなので。
なので、自分の失敗を認めて「この失敗を次に繋げるためにはどうすればいいのか?」と考えるようにしましょう。
サンクコスト効果を営業に活用する方法
- 商品について思考させまくる
- 接触回数を増やす
- わざわざ来させる
方法1:商品について思考させまくる
たとえば、あなたが保険の営業をしているのであれば、「保険」についてめちゃめちゃ考えさせるようにしましょう。
しかし、どうすれば思考させることができるのでしょうか?
結論、商品についての質問をしましょう。
すると、保険に対して「労力」というコストをかけさせることができ、最終的には「保険」の重要性を認識するようになるでしょう。
方法2:接触回数を増やす
これは先ほども紹介しましたが、ザイアンス効果です。
何度も接触することで、「何度も時間を使ってきたし、購入しないとこの機会がもったいない…」と思わせることができるようになります。
方法3:わざわざ来させる
営業マンは、こちらから相手方へ出向くことが多いですが、場合によってはこちらのフィールドに連れてくるのもアリです。
なぜなら、顧客からすると出向くためのコスト(時間・お金・労力)をかけることになるからです。
もちろん、これは業界にもよりますが、このような強気な営業も戦略的に取り入れていくといいでしょう。
サンクコスト効果をマーケティングに活用する方法
- スタンプカード
- 期限つきのポイント
- 毎月払い
方法1:スタンプカード
たとえば、サンマルクカフェなどでは、スタンプカードがあります。
一定の金額の商品を注文すると、スタンプがたまる仕組みです。
※スタンプが全てたまると、食べ物や飲み物がただでもらえたりします
このスタンプ戦略はリピート戦略において非常に効果的です。
なぜなら、スタンプをため続けると「ここまできたんだから、最後までスタンプをためよう!」と思うようになるからです。
結果、ずっとサンマルクカフェを使うようになるのです。
方法2:期限付のポイント
これは、ヨドバシカメラなどの電化製品店などで採用している戦略です。
たとえば、「あと3日で1,000円分のポイントが消滅してしまう!」とする。
すると、消費者は、今まで貯めてきたポイントが無駄になるため、「使わないともったいない!」となりヨドバシカメラへ向うのです。
結果、新たな消費をさせることができるようになるのです。
方法3:会員ランク制度
たとえば、大手ECサイトである楽天市場は、この会員ランク制度を導入しています。
仕組みを分かりやすく説明すると、決まった期間内に商品を購入した金額に応じて会員ランクが上がり、様々な特典を手に入れることができるというものです。
※購入をやめてしまうと、ランクが下がるような仕組みです
このような会員ランク制度を導入することで、ユーザーを囲い込むことができます。
なぜなら、「せっかくダイヤモンド会員になったんだから〜」という理由で、その他のECサイトで商品を購入しなくなるからです。
なので、会員ランク制度の導入も考えてみるようにしましょう。
まとめ:サンクコスト効果
では最後にまとめましょう。
本日は、
- サンクコスト効果とは
- サンクコスト効果の具体例
- サンクコスト効果を営業に活用する方法
- サンクコスト効果をマーケティングに活用する方法
というテーマでブログを執筆しました。
サンクコスト効果を理解することで、思考の罠から脱却できるようになりますし、営業やマーケティングにも活用することができます。
なので、本日の記事を繰り返し読んで、人生を最大化させましょう。