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ジャムの法則とは|多い選択肢は逆効果!?

ジャムの法則とは、選択肢が増えることで消費者の購入意欲が低下するという現象のことです。

たとえば、ある商品のプランが多すぎて「面倒くせー!」と商品を購入しなかったなんて経験はないでしょうか。もちろん、これは無意識による現象なので、覚えていないことの方が多いとは思いますが。このように、我々は、選択肢が多過ぎると、その中から選択することを回避してしまうことがあります。

しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。本記事では、ジャムの法則の心理的メカニズム、またそれを営業やマーケティングに活用する方法などを紹介していきます。

というわけで本日は、

本日のテーマ

ジャムの法則とは|多い選択肢は逆効果!?

というテーマでブログを執筆していこうと思います。

ジャムの法則とは

ジャムの法則

選択肢が増えることで消費者の購入意欲が低下するという現象

ジャムの法則は、別名「選択回避の法則」「決定回避の法則」などと呼ばれています

ジャムの法則(Jam Study)は、選択肢が増えることで消費者の購入意欲が低下するという現象を示す心理学の実験で、選択回避の法則と関連が深い概念です。この実験は、2000年に行われたシーナ・アイエンガー(Sheena Iyengar)とマーク・リーパー(Mark Lepper)による研究で有名になりました。

実験では、ジャム(果物の砂糖漬け)を試食する店頭ディスプレイが用意され、消費者にジャムの購入意欲を調査しました。実験の条件は2つで、一つ目は24種類のジャムを提供するディスプレイ、二つ目は6種類のジャムを提供するディスプレイでした。結果として、24種類のジャムが提供されたディスプレイでは試食者の数は多かったものの、実際に購入した人は少なく、6種類のジャムが提供されたディスプレイでは試食者の数は少なかったものの、実際に購入した人の割合が高かったことがわかりました。

この実験から、選択肢が多すぎると消費者は選択を避ける傾向があることが示され、選択肢を適切な数に限定することで消費者の購入意欲を高めることができることが示唆されました。ジャムの法則は、マーケティングや消費者行動の研究において重要な概念とされています。

ジャムの法則の具体例

では、ジャムの法則の具体例をいくつか紹介します。

  1. スーパーマーケットでの買い物
  2. レストランのメニュー
  3. ストリーミングサービス

事例1:スーパーマーケットでの買い物

スーパーマーケットでは、多くの商品が並べられています。例えば、シリアルの棚には多種多様なブランドとフレーバーが並んでいることがよくあります。選択肢が多すぎると、消費者はどれを選ぶか決めかねて購入を見送ることがあります。一方、選択肢が適切な数に限定されている場合、消費者は比較しやすく、購入意欲が高まります。

事例2:レストランのメニュー

レストランでの食事選択も、ジャムの法則が適用される典型的な事例です。メニューに多くの料理が並んでいる場合、どれを選ぶか決めるのが難しく、注文を遅らせたり、決断を回避したりすることがあります。一方、メニューがシンプルで選択肢が限られている場合、消費者は比較しやすく、満足度も高まる傾向があります。

事例3:ストリーミングサービス

映画やドラマのストリーミングサービスでは、たくさんのコンテンツが提供されています。選択肢が多すぎると、どの作品を視聴するか決めかねて、結局何も選ばずに時間を過ごすことがあります。このような場合、おすすめ機能やカテゴリー別の整理が行われていると、消費者は選択しやすくなり、サービス利用の満足度が向上します。

ジャムの法則が発動する理由

ジャムの法則が発動する理由は、心理学的および脳科学的な要因が複数関与しています。以下に、初心者にも分かりやすいように、主な理由を簡潔に説明します。

  1. 情報方によるストレス
  2. 決断の困難さ
  3. 損失回避
  4. 時間制約とエネルギーの節約

理由1:情報過多によるストレス

選択肢が多すぎると、脳はすべての選択肢を比較・評価するために多くの情報を処理しなければなりません。これにより、脳が情報過多になり、ストレスを感じることがあります。このストレスが選択回避につながります。

理由2:決断の困難さ

選択肢が多くなると、それぞれの選択肢を比較するのが難しくなります。脳は、選択肢間の違いを理解し、最適な選択をするために努力しますが、選択肢が増えるとそのプロセスが複雑になります。結果として、選択を避けることで、脳は困難な決断から逃れることができます。

理由3:損失回避

人間は、損失を避けるためにリスクを回避する傾向があります。選択肢が多い場合、間違った選択をするリスクが高くなります。そのため、選択を避けることで、損失のリスクを最小限に抑えることができます。

理由4:時間制約とエネルギーの節約

脳はエネルギー消費を最小限に抑えることを試みます。選択肢が多い場合、選択に時間がかかり、エネルギー消費が増えるため、選択を避けることでエネルギーを節約することができます。

ジャムの法則の実験

実験:401(k)計画と選択肢数 研究者:シーナ・アイエンガー、ウェイ・ジャン、エミリー・オッター(Sheena Iyengar, Wei Jiang, and Emily Ott)の実験を紹介します。

この実験では、アメリカの企業の従業員向けの退職貯蓄プログラム「401(k)計画」の選択肢数と従業員の参加率について調査が行われました。

401(k)計画では、従業員は選択肢が多数ある投資ポートフォリオの中から自分のリスク許容度や目標に合ったものを選ぶことができます。研究者たちは、従業員が投資選択肢が増えるにつれて、計画への参加率がどのように変化するかを調査しました。

結果として、選択肢が増えることで従業員の401(k)計画への参加率が低下することが示されました。特に、投資選択肢が10から20に増えた場合、参加率は約2%減少しました。これは、選択肢が増えることで、従業員が投資選択の決定を遅らせたり、選択肢の評価が困難になるため、参加を回避する傾向があると考えられます。

この実験からも、選択肢が増えることで選択回避が発生し、実際の行動に影響を与えることが示されています。このような実験は、ジャムの法則が金融や投資の分野においても有効であることを示しています。

ジャムの法則の例外

ここでは、ジャムの法則の例外について紹介していきます。つまり、選択肢の豊富さが逆に価値になる例ですね。

  1. 熟練者や専門家向けの場合
  2. フィルタリングやソート機能が充実している場合
  3. コレクションや趣味の対象となる場合

例外1:熟練者や専門家向けの場合

事例:専門書店

専門書店では、特定の分野やトピックに関する多くの選択肢が提供されています。一般的には選択肢が多いとジャムの法則が働き、消費者は選択回避を感じる可能性がありますが、専門書店では選択肢の多さが消費者にとって価値となります。

例外2:フィルタリングやソート機能が充実している場合

事例:大規模なオンラインショッピングサイト

大規模なオンラインショッピングサイトでは、何千、何万という多くの商品が提供されています。一般的には選択肢が多いとジャムの法則が働き、消費者は選択回避を感じる可能性がありますが、充実したフィルタリングやソート機能が提供されている場合、選択肢の多さが消費者にとって価値となります。

例外3:コレクションや趣味の対象となる場合

事例:切手コレクション

切手コレクションは、世界各国のさまざまな切手を集める趣味です。一般的には選択肢が多いとジャムの法則が働き、消費者は選択回避を感じる可能性がありますが、コレクションや趣味の対象となる場合、選択肢の多さが価値となります。

ジャムの法則をマーケティングに活用する方法

ここでは、ジャムの法則をマーケティングに活用する方法をいくつか紹介します。

  1. 選択肢を3つにする
  2. マジカルナンバーを意識する
  3. 段階的な選択プロセスの導入

方法1:選択肢を3つにする

商品・サービスの3つに絞り込むのが理想的です。なぜなら、3つの選択肢を用意することで、真ん中の選択肢が選ばれやすくなるからです。これをゴルディロックス効果といいます。いわゆる松竹梅戦略ですね。

たとえば、パソコンの価格が、下記の3つだったとする。すると、真ん中の4万円が選ばれやすくなるわけです。なぜなら、6万円と3万円にはそれぞれデメリットが存在するからです。6万円のプランには高いというデメリット、3万円のプランには質が劣るというデメリットがありますよね。つまり、真ん中の商品は、無難でありデメリットが非常に少ないために、選ばれやすい傾向があるのです。

  • 6万円
  • 4万円
  • 3万円

方法2:マジカルナンバーを意識する

マジカルナンバーとは、我々が一度に処理できる情報を数値化した概念になります。

プリンストン大学心理学教授であるジョージ・ミラー氏は、1956年の論文の中で、我々が処理できる情報の限界は「7±2」と発表しています。つまり、「5~9」は一度に処理することができるということであり、これを超えてしまうと、選択回避が発動してしまう可能性を高めてしまいます。

たとえば、お母さんに「お使い」を頼まれた時、どれくらいの数をメモせずに買って帰ることができるでしょうか。下記には9つの情報が記載されていますが、正直記憶するのが面倒になりますよね。なので、プランはどんなに多くても、9つ以内に抑えるようにしましょう。

  • お魚
  • ねぎ
  • じゃがいも
  • 人参
  • ピーマン
  • 電池
  • トイレットペーパー
  • サランラップ

方法3:段階的な選択プロセスの導入

複数の選択肢がある場合、消費者が選択をしやすくするために、段階的な選択プロセスを導入します。

例えば、カスタマイズ可能な商品を購入する際、最初に大きなカテゴリを選ぶことから始め、次に細かい選択肢を提示することで、選択肢の数を一度に絞り込むことができます。これにより、選択が容易になり、購入意欲が高まります。上記の例で言えば、12種類のプランの中から選ばせるのではなく、まずは3つの選択肢から選ばせて、そこから4つの中から選ばせるといったイメージになります。

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まとめ

本日のテーマ

ジャムの法則とは|多い選択肢は逆効果!?

選択肢が多いことをメリットのように感じていた人もいるでしょう。もちろん、選択肢が多いことのメリットも様々です。

しかし、一部の例外を除き、選択肢の豊富さは、売上の低下につながってしまいます。今一度、商品・サービスの提案の仕方や商品プランの改善を図ってみることをお勧めいたします。

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