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文脈効果とは|錯覚を利用した営業・マーケティング戦略

文脈効果とは、前後の文脈によって、対象の認知が変化するという心理現象です。

たとえば、リッツカールトンホテルで出されるコーラは1,000円と高いことで有名ですよね。では、それはなぜでしょうか。結論、目の前のコーラに、下記のような文脈が存在しているからです。

  • バケツ型ワインクーラー
    (まるでシャンパンが入っているみたい)
  • ホテルに設置してあるオシャレなインテリア
  • スーツを着ているホテルマン
  • 店内に優しく鳴り響くBGM

このように、我々の認知は、その対象の前後に存在する文脈によって大きく変化するということが分かります。しかし、なぜこのような現象が発動するのでしょうか。本記事では、文脈効果が発動する心理学的理由、またそれを営業やマーケティングに活用する方法などを紹介していきます。

というわけで本日は、

本日のテーマ

文脈効果とは|錯覚を利用した営業・マーケティング戦略

というテーマでブログを執筆していこうと思います。

文脈効果とは

文脈効果

前後の文脈によって、対象の認知が変化するという心理現象

文脈効果(context effect)とは、人々が情報や刺激を処理する際に、その周囲の文脈がどのように影響を与えるかを示す心理学の概念です。文脈は、人々が物事を理解したり、記憶を呼び起こしたり、判断や意思決定を行ったりする際に重要な役割を果たします。文脈効果は、以下のような様々な現象を含みます。

文脈効果は、言語理解、記憶、判断、意思決定など、様々な認知プロセスに関係しています。これらのプロセスは、人間の日常生活の中で絶えず行われており、文脈効果は私たちの認知と行動に大きな影響を与えています。

ちなみに、文脈効果は、1955年にアメリカの心理学者ジェローム・ブルーナー(1915~2006)が、論文『Journal of General Psychology』の中で提唱しました。

文脈効果の具体例

では、文脈効果の具体例をいくつかみていきましょう。

  1. 真ん中の文字
  2. レストランのメニュー
  3. 外食とゾンビ

例1:真ん中の文字

文脈効果の具体例

上記画像をご覧ください。さて真ん中の文字をお答えください。きっと、上から読んだ時は「B」、横から読んだ時は「13」と解答するのではないでしょうか。これは“上からの文脈”と“横からの文脈”によって、真ん中の文字の認知が変化したことによる現象です。

例2:レストランのメニュー

レストランのメニューにおいて、料理名や説明文の文脈が味わいに対する期待を変えることがあります。例えば、「新鮮なトマトとバジルのパスタ」という表現は、「トマトとバジルのパスタ」という表現よりも、おいしそうで高品質な印象を与えることがあります。このような文脈効果は、消費者の選択や満足度に影響を与えることがあります。

例3:夕食とゾンビ

今晩の夕食は、あなたの大好物であるステーキです。しかし、ふとテレビをつけると、ゾンビの映画が放送されていて、不本意にも“ゾンビが人の肉を貪るシーン”を見てしまいました。その瞬間、大好物であるはずのステーキでさえも、食べる気をなくしてしまいます。これは、ゾンビという文脈によって、ステーキへの認知が変化したことによる現象です。

文脈効果の実験

文脈効果に関する有名な実験の1つは、エリザベス・ロフタスとジョン・パーマーによる「車の衝突」実験です。この実験は、質問の仕方が目撃者の記憶にどのように影響を与えるかを調査するもので、フレーミング効果を示す典型的な例とされています。

  1. 参加者には、異なる速度で衝突する2台の車のビデオを見せます。
  2. 参加者に、事故の速度について質問します。ただし、質問の仕方は5つの異なるグループに分けて変えます。それぞれのグループに対して、以下のような質問を行います。
    • グループ1: 車はどのくらいの速さで「接触」したと思いますか?
    • グループ2: 車はどのくらいの速さで「ぶつかった」(hit)と思いますか?
    • グループ3: 車はどのくらいの速さで「衝突」した(smashed)と思いますか?
    • グループ4: 車はどのくらいの速さで「コライド」(collided)したと思いますか?
    • グループ5: 車はどのくらいの速さで「バンプ」(bumped)したと思いますか?

この実験では、質問の仕方(特に、動詞の選択)が参加者の速度の推定値に影響を与えたことが分かりました。例えば、「衝突」(smashed)という言葉が使われたグループでは、速度の推定値が他のグループよりも高くなりました。この結果は、文脈(特に、質問のフレーミング)が人々の判断や記憶に影響を与えることを示しています。

この実験は、心理学や法廷証言において、目撃者の記憶がどのように誘導される可能性があるかを理解する上で重要な知見を提供しています。また、一般的に、フレーミング効果が人々の意思決定や評価にどのように影響を与えるかを示す典型的な例となっています。

文脈効果が発動する理由

文脈効果が発動する心理学的理由は、人間の認知プロセスが周囲の状況や情報に大きく影響されることに起因しています。以下に、文脈効果が発動する主要な理由を詳細に説明します。

  1. 記憶の関連性
  2. トップダウン処理
  3. フレーミング

理由1:記憶の関連性

人間の記憶は、関連性が高い情報同士が連携して格納されています。文脈は、記憶の検索プロセスにおいて、関連する情報を活性化させる役割を果たします。このため、文脈がある情報に関連している場合、その情報がより容易に思い出されることがあります。

理由2:トップダウン処理

人間の認知は、既存の知識や期待に基づいて新しい情報を解釈するトップダウン処理と呼ばれるプロセスを行います。文脈がある情報と一致する場合、その情報が予測や期待に適合しやすくなり、認知の効率が向上します。

理由3:フレーミング

情報の提示方法や文脈が、人々の解釈や判断に影響を与えることがあります。フレーミング効果は、利益や損失、リスクや安全性などの観点から情報が提示されることで、人々の意思決定が変わる現象です。これは、人々が情報を処理する際に、特定の観点や枠組みに基づいて評価を行うためです。

文脈効果を営業に活用する方法

では、ここからは文脈効果を営業に活用する方法をいくつか紹介します。

  1. フレーミング効果
  2. 服装・身だしなみを整える
  3. 前置きを意識する

方法1:フレーミング効果

フレーミング効果を活用して、損失を強調することで、顧客に製品やサービスの必要性を訴求します。同じ情報でも、損失の側面を強調することで、顧客に対して行動を促す刺激を与えることができます。

たとえば、営業パーソンが、エネルギー効率の高い電化製品を販売する際に、「従来の製品を使い続けることで、毎月の電気代を20%も無駄に支払うことになります」という表現を用いることで、顧客はその損失を避けたいと感じ、エネルギー効率の高い製品に対して興味を持つでしょう。逆に、「エネルギー効率の高い製品で20%の電気代を節約できる」と表現すると、顧客は節約効果を評価するものの、緊急性や損失回避の感覚が弱まるため、購入意欲が低くなる可能性があります。

方法2:服装・身だしなみを整える

営業パーソンの服装や身だしなみは、顧客に与える印象を大きく左右します。適切な服装や身だしなみであれば、顧客は営業パーソンをプロフェッショナルで信頼できると感じるでしょう。逆に、不適切な服装や身だしなみは、顧客が営業担当者を信頼できないと感じる原因となります。これにはハロー効果が影響しています。

たとえば、金融機関の営業パーソンが、スーツやドレスシャツを着用し、身だしなみを整えることで、顧客は営業担当者が誠実で信頼できると感じ、提案される金融商品に対する信頼感が高まります。

方法3:前置きを意識する

前置きをするかしないかで顧客に与える印象は大きく変化します。たとえば、いきなり「何か今、お困りのことなどはございますか?」などと質問をしたとしても、顧客から「は?いきなり何?」と嫌悪感を持たれてしまう可能性があります。

しかし、ある前置きをすることで、そのような嫌悪感をもたれずに、スムーズにヒアリングに入ることができるのです。それは、「いくつか質問をさせていただきたいのですが〜」という前置きになります。このように、前置きをしてから質問に入ることで、顧客を回答モードにすることができます。つまり、スタンバイをさせることができるので、藪から棒な質問にならなくなるのです。

文脈効果をマーケティングに活用する方法

ここからは、文脈効果をマーケティングに活用する方法をいくつか紹介します。

  1. 画像・動画を意識する
  2. ストーリーテリング
  3. アンカリング効果

方法1:画像・動画を意識する

マイナビエージェントのサイトのヘッダー画像

マイナビエージェントさんに限らず、ほとんどの某有名サイトのヘッダー画像には、このような顔立ちが整った人たちが採用されています。ヘッダー画像に、顔立ちの整った人たちを掲載することで、サイト全体の印象をポジティブにし、読者に「ここの会社にお願いしてみよう!」と感じさせることができるようになるのです。

方法2:ストーリーテリング

ストーリーテリングを用いて、顧客に製品やサービスの利点を具体的なシチュエーションで説明することで、顧客の理解が深まります。この方法は、製品やサービスを現実の文脈でイメージさせることで、顧客の購買意欲を高める効果があります。

たとえば、営業パーソンが、ある企業の経営者に対して、自社の経費管理ソフトウェアを売り込む際に、他の企業がどのようにそのソフトウェアを活用して経費削減に成功したかという実話を紹介します。これにより、経営者は自社でも同様の成果が期待できると感じ、製品の購入意欲が高まります。

方法3:アンカリング効果

アンカリング効果を利用して、顧客の価格感覚を操作することができます。高価な製品を最初に提示することで、次に提示する製品の価格が相対的に安く感じられるようになります。

たとえば、営業パーソンが、高級車を販売する際に、最初に最も高価なモデルを紹介し、その後に比較的安価なモデルを提示します。これにより、顧客は2番目の車の価格が良心的であると感じ、購入意欲が高まる可能性があります。

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まとめ

本日のテーマ

文脈効果とは|錯覚を利用した営業・マーケティング戦略

文脈効果は、必ずあなたの売上を上げるお手伝いをしてくれるでしょう。もしかしたら、今まで科学的にも証明された営業トークを使っていたかもしれません。

しかし、それも服装がだらしないというような、文脈がネガティブな状況であれば、本当の力を発揮することはありません。

なので、今後は小手先のテクニックに注力するのではなく、その文脈に注意してそれらを活用するようにしてみださい。必ず、あなたの売上に変化が現れるはずです。

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