ブーメラン効果とは、説得されればされるほど、逆の態度・行動をとってしまうという心理効果です。
たとえば、親に「勉強しなさい!」と言われると、勉強する気が失せたりしたことってありませんか?
このように、説得は相手を変えるうえで非常に大切ではありませんが、実は逆効果になったりすることが多々あります。
しかし、なぜこのような現象が起こるのでしょうか?
というわけで本日は、
- ブーメラン効果とは
- ブーメラン効果を効果的に使う5つの条件
- ブーメラン効果を営業に活用する方法
- ブーメラン効果をマーケティングに活用する方法
というテーマでブログを執筆していこうと思います。
目次
ブーメラン効果とは
説得されればされるほど、逆の態度・行動をしてしまうという心理効果
ブーメラン効果は、「投げたブーメランが、ネガティブな形で自分に返って来る」というところから来ています。
経済学におけるブーメラン効果
「経済学」でも、ブーメラン効果は似たような意味合いで使われます。
たとえば、市場の拡大などを目的に、先進工業国が持つ生産技術を発展途上国に移転することで、発展途上国の生産技術が確立され、「市場を脅かす存在」となってしまうという意味合いです。
つまり、よかれと思った行動が、ネガティブな形で返って来るという意味合いで使われます。
ブーメラン効果の具体例
では、いくつか具体例をみていきましょう。
- 勉強
- ダイエット
- フォローアップ
例1:勉強を強要する
親に「勉強しなさい!」と叱られて、「うるせぇな〜」と思ったことはないでしょうか?
もしも、あなたが子を育てる親なのであれば、ひとつ忠告しておきます。
「勉強しなさい!」と叱るのは、「勉強するな!」と言っているようなものです。
なぜなら、「勉強しなさい!」と強要することで、子供は逆の態度・行動をとるようになるからです。
なので、もしも勉強をさせたいと思うのであれば、まずは「自分が楽しく学んでいる姿」を見せることから始めましょう。
すると、学ぶことを楽しむあなたの姿を見て、勉強するようになるかもしれません。
例2:ダイエットの忠告
ダイエットのアドバイスをしてみるものの、いっこうに努力しない友達っていませんか?
もしかしたら、それはあなたのせいかもしれません。
なぜなら、「ダイエットの方法」や「ダイエットの重要性」を伝えれば伝えるほど、友達はダイエットする気がなくなってしまうからです。
なので、友達から「アドバイスが欲しい!」と言われない限り、絶対にアドバイスはしないようにしましょう。
そして、仮にアドバイスを求められたとしても、必要以上にあーだこーだ言わないことです。
というのも、友達もあなたにアドバイスを求めたものの、ガミガミ言われると「アドバイスを求めるんじゃなかった…」と後悔させてしまうからです。
例3:過剰過ぎるフォロー
「クライアントは徹底的にフォローするべきだ!」と思っていませんか?
これはコーチ・コンサル・セラピスト業界でよくあることなのですが、結論、これは大きな間違いです。
過剰過ぎるフォローは、逆にクライアントから愛想を尽かされてしまうことになってしまいます。
- 「今日の成果報告をお願いします!」
- 「今日はどのようなタスクをこなしましたか?」
- 「今日はSNSを更新しましたか?」
このように、必要以上のサポートはかえってクライアントのモチベーションを低下させてしまいます。
オータニが、自己啓発の営業マンの時、このような過剰なサポートが原因で3名ほどクライアントが離れていってしまいました。
今思えば「ブーメラン効果が原因だったのか…」と痛感しています。
ブーメラン効果の実験
アメリカの心理学者コーエンの実験を紹介します。
「男女共学」に関して批判的な意見を持つ被験者を集め、彼らに「男女共学にどちらかと言えば賛成の意見を持つ被験者(サクラ)を説得してください」と伝えます。
その際、サクラを2つのグループに分けます。
- 「どちらかと言えば賛成」から「賛成」へと少しだけ態度を変えるグループ
- 「どちらかと言えば賛成」から「全面的に賛成!」と大きく態度を変えるグループ
その時の、どれくらいの数の被験者がサクラに同調するか? を調べました。
結果、①のグループでは、サクラに同調する被験者が多く出たのに対して、
②のグループでは、サクラに同調する被験者は全体の2割しか出ませんでした。
しかも、②のグループでは、男女共学に反対する態度が逆に強くなった被験者が6割にものぼったのです。
このように、強い反発に対しては、強い反発で返って来るということが見て取れますね。
ブーメラン効果はなぜ発動するの
- 別のことにコミットしている
- 自分の信念・価値観への説得
- 予告された説得
- 嫌いな相手からの説得
- 自由を奪われる
条件1:別のことにコミット(約束)している
たとえば、Aくんは友達と遊ぶ約束をしているとします。
そんな時、母親から「あなた、宿題はやったの?宿題が終わってから遊びなさい!」と言われても、Aくんを説得するのは難しいわけです。
なぜなら、コミットしていることを優先にしてしまうからです。
条件2:自分の信念・価値観への説得
たとえば、あなたは「社会貢献したい!」という価値観を持っているとする。
しかし、ある人に「社会貢献なんて大きなことを言ってもそれは達成されないよ!まずは自分を満たさないと!」と説得をされても、あなたは簡単にその価値観を変えることをしないでしょう。
なぜなら、価値観や信念は、あなたのアイデンティティと密接に関連しているため、それを否定されると自分が否定されたように感じるからです。
条件3:予告された説得
たとえば、「今からビンタしますね!」と言われると身構えてしまいますよね?
説得も全く一緒です。
「今からあなたを説得しますね?」と言われると、その内容が対したものでなくても、身構え、それに反発しようとしてしまいます。
条件4:嫌いな相手からの説得
人間には、「好き・嫌い」でものを判断する性質があります。
これを感情ヒューリスティックといいます。
たとえば、目の前の営業マンが最低なヤツだったとする。
すると、その営業マンからどんな説得をされても、その全てをネガティブに解釈してしまいます。
だから、営業では信頼関係の構築が大切なわけですね。
条件5:自由を奪われる
人間には、自由を奪われると、それを取り戻そうとする性質があります。
これを心理的リアクタンスといいます。
たとえば、「そんな彼氏と別れた方がいいよ!」と自由を制限すればするほど、「でも良いところもあるのよねぇ〜」と良い箇所に目を向けることになってしまうのです。
ブーメラン効果と関連した心理学
- 希少性
- 心理的リアクタンス
- カリギュラ効果
- ロミオとジュリエット効果
心理学1:希少性
限定されることで、その対象を不当に価値付けしてしまうという心理現象
具体例
主には、「数量」「期間」「地域」「会員」などを限定することで、「この機会を逃してはいけない!」と感じ、その対象に対して、不当に価値付けしてしまいます。
心理学2:心理的リアクタンス
自由を制限されるほど、その自由を取り戻そうとする心理現象
例:勉強の強要
たとえば、親から「勉強しなさい!」「宿題はやったの!?」と言われたら、逆にやりたくなりなったなんて経験はありませんか?
実は、これは心理的リアクタンスによる現象です。
「勉強しなさい!」と言われたことにより、自分の自由が制限されたので、無意識にそれをと戻そうとするのです。
心理学3:カリギュラ効果
禁止や制限をかけると、逆にしたくなるという心理現象
例:映画カリギュラ
カリギュラ効果の由来としては、アメリカ・イタリアの合作映画の『カリギュラ』から来ています。
その内容はあまりにも過激であったため、一部地域で上映を禁止されました。
しかし、それが逆に注目を集めるという結果となったというところからカリギュラ効果と名付けられました。
心理学4:ロミオとジュリエット効果
障害があるほど、それを乗り越えようとする気持ちが高まる心理効果
例:ロミオとジュリエット
ロミオとジュリエット効果の由来としては、シェイクスピアによる『ロミオとジュリエット』という戯曲から来ています。
ロミオとジュリエットは、お互いの両親の不仲により仲を引き裂かれてしまいます。
しかし、これにより逆に愛が燃え盛り、ロミオはジュリエットに会いに行くようになってしまうのです。
ブーメラン効果を営業に活用する方法
- 信頼関係を強化する
- 現状を肯定する
方法1:信頼関係を強化する
説得したい相手との信頼を強化するようにしましょう。
すると、ブーメラン効果の影響を受けにくくなります。
たとえば、好きな人からの説得には耳を貸そうと思いますよね?
営業とプロセス
- アイスブレイク (警戒心の解除)
↓ - ヒアリング
↓ - プレゼンテーション
↓ - クロージング
営業では信頼が命
信頼関係がしっかり構築できていれば、説得に耳を傾けてくれる可能性が飛躍的に上がります。
特に、営業のクロージングのプロセスは、顧客の反論に対処しなければならず、どうしても「プッシュ」しなければならない場面となります。
つまり、信頼関係が構築されていない段階で、プッシュしても顧客から心理的な反発が起きてしまうのです。
なので、信頼関係は必ず構築するようにしましょう。
方法2:現状を肯定する
営業で難しいのは、相手の悩みを引っ張り出すことです。
しかし、あることをすることで、簡単に悩みを引っ張ってくることができます。
それは、相手の現状を肯定するという方法です。
例:集客コンサルタント
顧客にダイレクトに「何か集客での悩はありませんか?」なんて尋ねるのもアリですが、ちょっと売り込み感が出てしまいます。
なので、そんな時は「今のままでも十分集客ができているんじゃないですか?」と現状を肯定するのです。
すると、心理的リアクタンスが発動し「いやいや、そんなことないですよ〜」というレスポンスが返ってきます。
※これがいわゆる「謙遜」というやつです
ラスト:悩みを引っ張り出す
そして、下記のように質問をすると、自然と悩みを引っ張ってこれるようになります。
そうなんですか?けっこうできていると思っていました!
もしもよろしければそのお悩み聞かせていただけますか?
ブーメラン効果をマーケティングに活用する方法
- タイムセール
- 購入を禁止する
方法1:タイムセール
マーケティングでも同様で、「いますぐ購入してください!」と伝えてしまうと、ブーメラン効果が働いてしまいます。
なので、タイムセールを使って、消費者自らの意思で選択できるようにしましょう。
たとえば、ECサイトとかであれば、特定のジャンルの商品が30%OFFというプロモーションをやっていたりします。
さらに、もしも可能であれば、「残り23時間49分!」みたいな感じで、サイト内に時間制限を表示するようにしましょう。
すると、「今すぐ買わないと!」という感じで、消費者の訴求度を高めることができます。
方法2:購入を禁止する
時には購入を禁止する過激な戦略にもチャレンジしてみてください。
たとえば、ダイエット商品を販売しているのであれば、「すでにお痩せの方は、絶対に覗かないでください!」というコピーを入れてみたり。
きっと、このサイトを訪問している人の多くは、ダイエットに興味がある太ったユーザーなので、このようなコピーには反応してしまうでしょう。
なぜなら、「覗くな!」と言われたら、「覗きたい!」と感じてしまうからです。
(カリギュラ効果)
まとめ:ブーメラン効果
では最後にまとめましょう。
本日は、
- ブーメラン効果とは
- ブーメラン効果を効果的に使う5つの条件
- ブーメラン効果を営業に活用する方法
- ブーメラン効果をマーケティングに活用する方法
というテーマでブログを執筆しました。
世の中には、「想いを伝える営業」が流行っており、ゴリゴリにプッシュする営業が当たり前になっています。
しかし、「だから売れない」ということを理解してください。
自分の想いばかりを伝える「独りよがりな営業」をするのではなく、顧客のことも考えた営業をしていきましょう。