ヒューリスティックとは、過去の経験による直感的な「速い思考」のことです。
我々の脳は、過去の経験による直感的な思考を使うことが多々あります。
ただ、これだけではモヤっとしますよね?
なので、もう少しヒューリスティックについて詳しく解説していこうと思います。
というわけで本日は、
- ヒューリスティックとは
- 4種類のヒューリスティック
というテーマでブログを執筆していきます。
目次
ヒューリスティックとは
過去の経験による直感的な「速い思考」のこと
※ちなみに、ヒューリスティックの対義語はアルゴリズムになります
ヒューリスティックの具体例
- カレー
- シャンプー
- メガネ
例1:カレー
たとえば、「カレーを食べたい!」と思った時に、どこのメーカーのカレーが頭に浮かびますか?
オータニは、「ハウス食品」から出ている「ジャワカレー」が浮かびます。
例2:シャンプー
他にも、「シャンプー」と言われた時に、どこのメーカーのシャンプーが頭に浮かびますか?
オータニは、「花王」から出ている「サクセス」が浮かびます。
例3:メガネ
さらに、メガネをかけている男性に対して、どのような印象を持つでしょうか?
きっと、「頭が良いに違いない!」と感じるのではないでしょうか。
実は、これはヒューリスティックに影響によるものになります。
ヒューリスティックのメリット
結論、ヒューリスティックのおかげで、脳のエネルギーを節約することができます。
というのも、全てのものごとに「熟考」していたら脳がバーストしてしまうからです。
たとえば、「1+1は?」って質問されたらすぐに「2!」って出てきますよね?
この質問をされて、「え〜と…」なんていちいち熟考しないですよね?
このように、脳は過去に経験したことを頼りに、熟考することなく「速い思考」を使うようにできているのです。
ヒューリスティックのデメリット
結論、「正確さ」を犠牲にしてしまうことが多々あります。
たとえば、10万円のネックレスがあるとする。
ただ、そのネックレスは紛い物で10万円の価値なんてありません。
しかし、多くの人たちは「10万円ということは質が高いネックレスに違いない!」と間違った解釈をしてしまうわけです。
※これをヴェブレン効果といいます
このように、ヒューリスティックは、脳のエネルギーを節約する上で非常に効率的な仕組みではあるのですが、
それと引き換えに、「正確さ」を欠いた意思決定をしてしまうというデメリットも持ち合わせているのです。
ヒューリスティックと認知バイアス
じゃあ、認知バイアスとの違いは?
お!かなり勉強していますね!
というわけで、ここからは勘違いされて使われやすい“ヒューリスティックと認知バイアスの違い”について解説していこうと思います。
認知バイアスとは
本能による直感的な「速い思考」のこと
- 認知バイアス=本能による直感的な「速い思考」のこと
- ヒューリスティック=過去の経験による直感的な「速い思考」のこと
これはオータニの定義になります。正直、これらの違いを分かりやすく説明してくれているソースがどこにもありませんでした
例1:ハロー効果(後光効果)
ある突出した特徴がその他の要素を歪めてしまうという心理傾向
たとえば、見た目が美人な女性に対して、「性格が良さそう!」「清潔に違いない!」などと評価してしまうのは、別に経験に基づいた判断ではないですよね?
あくまでも、「そうに違いない!」という錯覚をしているだけです。
例2:内集団バイアス
自分のグループに属している人を無意識のうちにひいきしてしまうという心理現象
たとえば、初対面の相手が、あなたが大好きな球団を応援していたら、なんとなく好意を感じてしまいますよね?
これは、我々の本能が無意識のうちに、「こいつは仲間だ!」と判断しているからです。
共通点があると、それだけ仲間意識を感じてしまうのは、これが理由です。
例3:現状維持バイアス
現状維持をしようとする人間の本能のこと
たとえば、安月給で転職を考えてはいるものの、なかなか行動に移せないなんて経験はありませんか?
他にも、「明日から毎日ウォーキングをしよう!」と考えているにも関わらず、3日坊主で終わってしまうなんてことありますよね・・・
これは、「現状を維持したい!」という生得的欲求が関係しています。
バイアスについて知りたい方はこちら
4種類ヒューリスティック
では、これ以降では、ヒューリスティックを代表する4つのヒューリスティックをそれぞれ解説していこうと思います。
- 代表性ヒューリスティック
- 利用可能性ヒューリスティック
- 係留ヒューリスティック
- 感情ヒューリスティック
代表性ヒューリスティック
過去の経験から、連想ゲームのように処理される傾向
※これはヒューリスティクスの中でもかなりメジャーです
たとえば、「カレー=ハウス食品」「シャンプー=サクセス」の例は全て代表性ヒューリスティックによるものです。
実験:リンダ問題
代表性ヒューリスティックで有名な実験と言えば『リンダ問題』でしょう。
被験者にリンダという女性のプロフィールを読ませました。
リンダは、31歳の独身女性。外交的でたいへん聡明である。専攻は哲学だった。
学生時代には、差別社会主義の問題に強い関心を持っていた。また、反核運動に参加したこともある。
引用元:「ファスト&スロー」
次に、被験者に対して下記の質問をしました。
- リンダは銀行員ですか?
- リンダはフェミニスト運動に熱心な銀行員ですか?
そして、その時の被験者たちの回答を調べました。
被験者の全員が口を揃えて「フェミニスト運動に熱心な銀行員」だと答えました。
これって面白い結果ですよね?
なぜなら、「フェミニスト運動に熱心な銀行員」である可能性は「銀行員」である可能性を必ず下回るからです。
※①は②を含みますからね
では、なぜこのようなエラーが起きてしまったのか?
それは、リンダのプロフィールの中にある「独身女性」「差別社会主義の問題」「反核運動」などの要素に引っ張られてしまったからです。
冷静に考えたら分かる問題なのですが、ヒューリスティックによって正確さが犠牲になってしまったわけです
利用可能性ヒューリスティック
「思い出しやすさ」によって、認知が歪められてしまう心理現象
例:コンビニと歯科医院の数
たとえば、「コンビニ」と「歯科医院」ってどちらの方が多いと思いますか?
きっと、多くの人たちは「コンビニに決まってるじゃん!」と答えるでしょう。
しかし、残念ながらそれは不正解です。
なんと2017年の調査では「コンビニ」と「歯科医院」では1.3倍の差をつけて、「歯科医院」の方が多いということが分かっています。
では、なぜこのような現象が起きてしまったのでしょうか?
結論、「コンビニ」の方が「歯科医院」と比べると接触頻度が多く、頭の中に浮かんできやすいからです。
このように、「想像のしやすさ」が「数」に影響を与えることがあります。
実験:ノーバート・シュワルツの実験
心理学者のノーバート・シュワルツは、被験者を2つのグループに分けて、別々の質問をしました。
- 何か強く主張した例を6つ書き出し、自分はどの程度自己主張が強いかを自己評価させたグループ
- 何か強く主張した例を12個書き出し、自分はどの程度自己主張が強いかを自己評価させたグループ
そして、それぞれのグループに、「あなたは自己主張が強い方だと思いますか?」という質問をします。
①の被験者の方が②の被験者よりも、自分の主張が強いと評価する傾向がありました。
なぜなら、①の被験者たちは思い出すのが容易でしたが、②の被験者たちは数が多いため思い出すのに苦戦したからです。
つまり、②の被験者たちは、思い出すのが困難であったがために、「自分の主張は弱いものかもしれない…」と錯覚してしまったというわけです。
このように、「想像のしやすさ」が「主張の強弱」にも影響を与えるのです。
係留ヒューリスティック
先行刺激が基準となって、後の情報を判断してしまうという心理効果
※係留ヒューリスティックは、アンカリング効果としても知られています
たとえば、5キロの荷物を持つ際に、10キロの荷物を持ってから、5キロの荷物を持った方が軽いと感じませんか?
これは、10キロの荷物が基準となったことで、5キロという重さの感覚が麻痺してしまったからです。
仰天:「高い…」が「安い!」に!
「安い!」と思わせたいのであれば、まずは高額の基準を伝えましょう。
たとえば、30万円という高単価商品を販売する場合、「弊社の商品は30万円になります!」と提示するよりも、
「平均相場は50万円なのですが、弊社では30万円で提供させていただきます!」と提示した方が安いと感じさせることができます。
研究:マサチューセッツ工科大学
まず、被験者の学生たちに自分の社会保険番号の下二桁を書いてもらいます。
次に、なんの情報も伝えずにチョコレートとワインに値段をつけてもらいました。
下二桁の番号が大きい人(99とか88)は、下二桁が小さい人(12とか23)よりもチョコレートとワインに60〜120%も高い値段付けるという結果となりました。
つまり、社会保険番号に引っ張られて、チョコレートとワインの値付けに差が生まれたのです。
このように、先行刺激と後続刺激に関係性がなかったとしても、我々は、係留ヒューリスティックの影響を受けるのです。
感情ヒューリスティック
感情に従って判断や意思決定してしまうという心理現象
もっと分かりやすい言い方をするのであれば、「好き・嫌い」で物事を判断してしまうという心理現象ですね
例:詐欺師
なぜ詐欺被害は減らないのでしょうか?
もちろん、さまざまな理由が考えられますが、結論、詐欺師たちが感情ヒューリスティックを巧みに利用しているからと言えます。
実は、詐欺師に「嫌な感じの人」っていないんですよね。
なぜなら、詐欺師の多くは「善良な人間」という仮面をかぶっているからです。
被害者はその仮面を見るや否や「この人が人を騙すはずがない!」と錯覚してしまい、考えれば分かるような詐欺に騙されてしまうのです。
実験:心理学者ポール・スロビック
被験者に
水道へのフッ素添加、化学プラント、食品防腐剤、自動車
などの様々な技術について個人的な「好き・嫌い」を答えてもらいます。
そして、それぞれのメリットとリスクを書き出すように指示しました。
- ある技術に好感を抱いている場合は、メリットを高く評価し、リスクはほとんど考慮しない
- ある技術を嫌いな場合は、リスクを強調し、メリットはほとんど浮かばない
このように、我々は、好きなものに対してメリットしかみえなくなり、嫌いなものに対してはリスクしかみえなくなる傾向があるのです。
これは、嫌いな人の良いところをみようとしなくなるのと全く一緒ですね。
まとめ:ヒューリスティックとは
では最後にまとめましょう。
本日は、
- 代表性ヒューリスティック
- 利用可能性ヒューリスティック
- 係留ヒューリスティック
- 感情ヒューリスティック
というテーマでブログを執筆してきました。
もしも、ヒューリスティックと似た概念である「バイアス」についての理解を深めたい方は、『バイアスとは|悪い影響を与える13のバイアス』を参考にしてください。