ヒューリスティックとは、過去の経験による直感的な「速い思考」のことです。
我々の脳は、過去の経験による直感的な思考を使うことが多々あります。
たとえば、あなたは”カレーのメーカー”と言われて、一番最初にどのメーカーを思い浮かべるでしょうか。人によって、ハウス、日清、大塚食品など様々なメーカーが浮かぶのではないかと思います。実は、これはヒューリスティックが影響を与えているんです。
ただ、これだけではモヤっとしますよね。本記事では、ヒューリスティックをより掘り下げて解説していき、さらには様々なヒューリスティックも紹介していきます。
というわけで本日は、
ヒューリスティックとは|4種類のヒューリスティックとその対策
というテーマでブログを執筆していきます。
目次
ヒューリスティックとは
過去の経験による直感的な「速い思考」のこと
ちなみに、ヒューリスティックの対義語は、アルゴリズムになります。アルゴリズムは、SNSなどを運用していれば一度は聞いたことがある単語なのではないでしょうか。
ヒューリスティックとアルゴリズムは、問題解決や意思決定において使用される2つの異なるアプローチです。それぞれの違いを理解するために、具体的な事例を用いて説明します。
問題: ある街で、10軒の家を訪問して荷物を届ける配達員がいます。最短ルートを見つけるために、ヒューリスティックとアルゴリズムの違いを見ていきましょう。
ヒューリスティックは、効率的に答えにたどり着くことができるが、最適な解決策を見つけることができない場合があります。一方、アルゴリズムは最適な解決策を見つけることができますが、計算量が大きくなると時間がかかることがあります。
どちらのアプローチを選択するかは、問題の性質や利用可能なリソースに応じて決定されます。
ヒューリスティックスの具体例
よりヒューリスティックスを理解してもらうために、下記に日常の例を3つ紹介しておきます。
- カレー
- シャンプー
- メガネ
例1:カレー
たとえば、「カレーを食べたい!」と思った時に、どこのメーカーのカレーが頭に浮かびますか。オータニは、「ハウス食品」から出ている「ジャワカレー」が浮かびます。(代表性ヒューリスティック)
例2:シャンプー
他にも、「シャンプー」と言われた時に、どこのメーカーのシャンプーが頭に浮かびますか。オータニは、「花王」から出ている「サクセス」が浮かびます。(代表性ヒューリスティック)
例3:詐欺師
あなたは、今までに詐欺師に騙された経験があるでしょうか。実は、詐欺の多くは、ものすごく印象が良い傾向にあります。それゆえ、多くの消費者が彼らの魔の手へと落ちてしまうのです。(感情ヒューリスティック)
以上がヒューリスティックスの簡単な具体例になりますが、ここで紹介したヒューリスティックは、後ほど改めて解説していきますね。
ヒューリスティックスのメリット・デメリット
ここでは、ヒューリスティックスのメリットとデメリットを解説していきます。
ヒューリスティックのメリット
結論、ヒューリスティックのおかげで、脳のエネルギーを節約することができます。というのも、全てのものごとに「熟考」していたら脳がバーストしてしまうからです。
たとえば、「1+1は?」って質問されたらすぐに「2!」って出てきますよね。この質問をされて、「え〜と…」なんていちいち熟考しないですよね?
このように、脳は過去に経験したことを頼りに、熟考することなく「速い思考」を使うようにできているのです。
ヒューリスティックのデメリット
結論、「正確さ」を犠牲にしてしまうことが多々あります。
たとえば、10万円のネックレスがあったとする。ただ、そのネックレスは紛い物で10万円の価値なんてありません。しかし、多くの人たちは「10万円ということは質が高いに違いない!」と間違った解釈をしてしまうわけです。これをヴェブレン効果といいます。
このように、ヒューリスティックは、脳のエネルギーを節約する上で非常に効率的な仕組みではあるのですが、それと引き換えに、「正確さ」を欠いた意思決定をしてしまうというデメリットも持ち合わせているのです。
ヒューリスティックと認知バイアス
認知バイアスとヒューリスティックスは、両方とも人間の思考や判断に関連する概念ですが、それぞれ異なる意味を持っています。それらの違いを理解するために、具体的な事例を用いて説明します。
認知バイアス
認知バイアスは、情報処理や判断において、人々が無意識的に行ってしまう偏った思考の傾向です。認知バイアスは、理性的な判断を妨げる要因となることがあります。
例:確証バイアス
ある人が健康に良いと信じている食品(例えば、オーガニック食品)を購入する際に、その食品に関するポジティブな情報を優先的に受け入れ、ネガティブな情報は無視する傾向があります。この確証バイアスにより、その人は自分の信念を裏付ける情報を探し求め、客観的な判断ができなくなることがあります。
ヒューリスティックス
ヒューリスティックは、問題解決や意思決定を行う際に使用される、短絡的な思考や経験則に基づく方法です。ヒューリスティックは、迅速に答えにたどり着くことができることがありますが、最適な解決策を見つけることができない場合があります。
例:係留ヒューリスティック
ある人が家電製品を購入しようとしています。その人は、元々の価格が2万円で、割引価格が1万5千円だと知ります。この元々の価格(2万円)がアンカー(基準)となり、割引価格がお得だと判断します。しかし、他の店舗でさらに安い価格で販売されている可能性があります。このヒューリスティックは、迅速に判断するために役立ちますが、最適な選択を保証するわけではありません。
認知バイアスは、情報処理や判断における無意識的な偏りのことで、理性的な判断を妨げる要因となることがあります。
一方、ヒューリスティックは、短絡的な思考や経験則に基づく問題解決や意思決定の方法で、効率的に答えにたどり着くことができることがありますが、最適な解決策を見つけることができない場合があります。
要するに、認知バイアスは人間が無意識に犯してしまう思考の偏りやエラーですが、ヒューリスティックは、あえて簡略化された思考ルールを使用して迅速に判断や問題解決を行う方法です。
認知バイアスは情報の処理や評価に影響を与え、ヒューリスティックは問題解決や意思決定のプロセスに影響を与えます。
4種類ヒューリスティック
では、これ以降では、ヒューリスティックを代表する4つのヒューリスティックをそれぞれ解説していこうと思います。
- 代表性ヒューリスティック
- 利用可能性ヒューリスティック
- 係留ヒューリスティック
- 感情ヒューリスティック
代表性ヒューリスティック
過去の経験から、連想ゲームのように処理される傾向
たとえば、「カレー=ハウス食品」「シャンプー=サクセス」の例は全て代表性ヒューリスティックによるものです。
実験:リンダ問題
代表性ヒューリスティックで有名な実験と言えば”リンダ問題”でしょう。実験内容をお伝えすると、まず被験者にリンダという女性のプロフィールを読ませました。
リンダは、31歳の独身女性。外交的でたいへん聡明である。専攻は哲学だった。学生時代には、差別社会主義の問題に強い関心を持っていた。また、反核運動に参加したこともある。
引用元:「ファスト&スロー」
次に、被験者に対して下記の質問をします。
- リンダは銀行員ですか?
- リンダはフェミニスト運動に熱心な銀行員ですか?
そして、その時の被験者たちの回答を調べました。
結果、被験者の全員が口を揃えて「フェミニスト運動に熱心な銀行員」だと答えました。これって面白い結果ですよね。なぜなら、「フェミニスト運動に熱心な銀行員」である可能性は「銀行員」である可能性を必ず下回るからです。
では、なぜこのようなエラーが起きてしまったのか?それは、リンダのプロフィールの中にある「独身女性」「差別社会主義の問題」「反核運動」などの要素に引っ張られてしまったからです。
利用可能性ヒューリスティック
「思い出しやすさ」によって、認知が歪められてしまう心理現象
たとえば、「コンビニ」と「歯科医院」ってどちらの方が多いと思います?きっと、多くの人たちは「コンビニに決まってるじゃん!」と答えるでしょう。
しかし、残念ながらそれは不正解です。なんと2017年の調査では「コンビニ」と「歯科医院」では1.3倍の差をつけて、「歯科医院」の方が多いということが分かっています。
では、なぜこのような現象が起きてしまったのでしょうか?結論、「コンビニ」の方が「歯科医院」と比べると接触頻度が多く、頭の中に浮かんできやすいからです。このように、「想像のしやすさ」が「数」に影響を与えることがあります。
実験:ノーバート・シュワルツの実験
心理学者のノーバート・シュワルツは、被験者を2つのグループに分けて、別々の質問をしました。
- 何か強く主張した例を6つ書き出し、自分はどの程度自己主張が強いかを自己評価させたグループ
- 何か強く主張した例を12個書き出し、自分はどの程度自己主張が強いかを自己評価させたグループ
そして、それぞれのグループに、「あなたは自己主張が強い方だと思いますか?」という質問をします。
結果、①の被験者の方が②の被験者よりも、自分の主張が強いと評価する傾向がありました。なぜなら、①の被験者たちは思い出すのが容易でしたが、②の被験者たちは数が多いため思い出すのに苦戦したからです。
つまり、②の被験者たちは、思い出すのが困難であったがために、「自分の主張は弱いものかもしれない…」と錯覚してしまったというわけです。このように、「想像のしやすさ」が「主張の強弱」にも影響を与えるのです。
係留ヒューリスティック
先行刺激が基準となって、後の情報を判断してしまうという心理効果
たとえば、5キロの荷物を持つ際に、10キロの荷物を持ってから、5キロの荷物を持った方が軽いと感じませんか?これは、10キロの荷物が基準となったことで、5キロという重さの感覚が麻痺してしまったからです。
なので、「安い!」と思わせたいのであれば、まずは高額の基準を伝えましょう。たとえば、30万円という高単価商品を販売する場合、「弊社の商品は30万円になります!」と提示するよりも、「平均相場は50万円なのですが、弊社では30万円で提供させていただきます!」と提示した方が安いと感じさせることができます。
ちなみに、係留ヒューリスティックは、アンカリング効果としても知られています。
研究:マサチューセッツ工科大学
まず、被験者の学生たちに自分の社会保険番号の下二桁を書いてもらいます。次に、なんの情報も伝えずにチョコレートとワインに値段をつけてもらいました。
実験の結果、下二桁の番号が大きい人(99とか88)は、下二桁が小さい人(12とか23)よりもチョコレートとワインに60〜120%も高い値段付けるという結果となりました。
つまり、社会保険番号に引っ張られて、チョコレートとワインの値付けに差が生まれたのです。このように、先行刺激と後続刺激に関係性がなかったとしても、我々は、係留ヒューリスティックの影響を受けるのです。
感情ヒューリスティック
感情に従って判断や意思決定してしまうという心理現象
もっと分かりやすい言い方をするのであれば、「好き・嫌い」で物事を判断してしまうという心理現象ですね
ところで、なぜ詐欺被害は減らないのでしょうか?もちろん、さまざまな理由が考えられますが、結論、詐欺師たちが感情ヒューリスティックを巧みに利用しているからと言えます。
実は、詐欺師に「嫌な感じの人」っていないんですよね。なぜなら、詐欺師の多くは「善良な人間」という仮面をかぶっているからです。
被害者はその仮面を見るや否や「この人が人を騙すはずがない!」と錯覚してしまい、考えれば分かるような詐欺に騙されてしまうのです。
実験:心理学者ポール・スロビック
被験者に、水道へのフッ素添加、化学プラント、食品防腐剤、自動車などの様々な技術について個人的な「好き・嫌い」を答えてもらいます。そして、それぞれのメリットとリスクを書き出すように指示しました。実験の結果は下記のようになりました。
- ある技術に好感を抱いている場合は、メリットを高く評価し、リスクはほとんど考慮しない
- ある技術を嫌いな場合は、リスクを強調し、メリットはほとんど浮かばない
このように、我々は、好きなものに対してメリットしかみえなくなり、嫌いなものに対してはリスクしかみえなくなる傾向があるのです。これは、嫌いな人の良いところをみようとしなくなるのと全く一緒ですね。
まとめ
- 代表性ヒューリスティック
- 利用可能性ヒューリスティック
- 係留ヒューリスティック
- 感情ヒューリスティック
最初は、ヒューリスティックってなんなの、といった疑問を感じていたでしょうが、この記事を読んでしっかり理解してもらえたのではないでしょうか。
ヒューリスティックを理解しておくことで、自身を客観的に見つめることができるので、最適な解決策が見つかることもあります。今後は、本日紹介した4つのヒューリスティックだけは意識して、生活するようにしていきましょう。
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